「食と健康」の専門性を磨く「女子栄養大学」!その学部や入試情報など

大学

1.Abstraction

女子栄養大学日本の栄養学の先駆け的な存在であり、食と健康」を専門とする全国でも珍しい大学です。現在でもその分野では優秀な成果を残しており、管理栄養士や臨床検査技師、養護教諭を多数輩出し、また食品メーカー外食産業などで活躍する卒業生もいます。教育の特徴はこのような「食」に関わる職に就いた時に役立つ実践的な教育です。実習などの科目が豊富にあり、これらを経験する中で様々なスキルを身に付けることができます。多くの卒業生がとても忙しいと言いながらも充実した学生生活を送れたと話すこの大学の実態を見ていきましょう。

2.大学概要

非常に歴史あるこの大学は、日本の「栄養学」の権威である香川綾により創設され「食と健康」に関わる研究・教育を続けてきました。学校を運営するのは香川綾が夫の昇三とともに創設した学校法人香川栄養学園であり、短期大学部や香川調理製菓専門学校を併設しています。ちなみに、名前の通り女子大ですが、大学院と栄養学部二部また学園に併設されている香川調理製菓専門学校は共学です。

2.1 学校の沿革・理念・使命など

1933年に香川綾によって発足した「家庭食養研究会」がこの大学の前身となっています。その後幾度かの改称を経て戦後に「女子栄養短期大学」が設置され、更に1961年に「女子栄養大学」が設立、家政学部食物栄養学科が設置されました。

大学の建学の精神は「食により人間の健康の維持・改善を図る」であり、教育研究上の目的を「食を通して疫病を予防し、人々の健康を保持・増進することに貢献できる専門家を養成」することとしています。[i]

2.2 著名な業績や有名人

創設者の香川綾は胚芽米の普及4群点数法の提唱計量カップと計量スプーンの考案など日本の栄養学普及に大きな役割を果たし、「管理栄養士」資格の創設にも携わりました。その功績が認められ勲二等瑞宝章文化功労者も受賞しました。

管理栄養士の国家試験合格者数は日本一の223名(2019年)であり、ここ数年は毎年トップを維持しています。また倍率が高く難関と言われる養護教諭の採用試験にも多数の学生が合格しており、この分野では日本トップクラスの大学であると言えるでしょう。

著名な出身者には俳優の石田ゆり子さん(短期大学部卒業)やフードコンサルタントの浅尾貴子さんなどがいます。

3.学部・学科

栄養学部の下に3学科2専攻が置かれ、それぞれで高度な専門教育を行っています。メインとなるキャンパスは埼玉県の坂戸にあり、実習室など恵まれた環境を活かして実践的なスキルを磨くことができます。多数の資格を取得できるのも特徴の一つです。

3.1 学部・学科についての概要

現在、学部は栄養学部と栄養学部二部(男女共学・夜間開講)が置かれています。栄養学部には実践栄養学科保健栄養学科(栄養科学専攻、保健養護専攻)食文化栄養学科の3学科が、栄養学部二部には保健栄養学科がそれぞれ設置されています。なお、栄養学部二部は2019年度からの募集を停止し、2021年に廃止予定です。

3.2 入学定員

各学科・専攻の定員は以下の通りです。

表1 学科の定員

(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)

3.3 キャンパス・周辺地域の環境

学園が所有するキャンパスは坂戸駒込にあり、坂戸キャンパスは栄養学部と大学院が、駒込キャンパスは栄養学部二部と短期大学部、専門学校が使用しています。

坂戸キャンパスは大学本部も置かれている「本キャンパス」です。埼玉県坂戸市にあり、東武東上線若葉駅から徒歩3分の場所にあります。池袋駅からは急行で40分ほどです。ゆったりとした構内には教室棟や実験・研究施設の他、テニスコート・グラウンドなどの運動施設や学生寮もあり、春になると桜を楽しむことができます。駅前には大きな商業施設があるため生活には不便しないでしょう。また閑静な住宅街の中にあり、若葉駅の近くに1人暮らしする学生も多いそうです。

駒込キャンパスJR山手線・東京メトロ南北線の駒込駅から徒歩3分という便利な場所にあります。戦前からある歴史あるキャンパスで、学園が発展する基礎となった場所です。最先端の実習・研究施設が揃っており、カフェテリアや図書館、クラブ室もあります。

3.4 学科・専攻

ここでは学科・専攻について詳しく説明していきます。

  • 栄養学部
    • 実践栄養学科
      栄養学に関する専門知識と実践力をバランスよく身に付けた管理栄養士の育成を目指します。専門科目として臨床栄養系、福祉栄養系、地域栄養・食支援系、スポーツ栄養系、フードサービスマネジメント系、食品開発系の6分野栄養教諭免許取得を設け、保健センターなどでの学外実習もあります。これまでに輩出してきた管理栄養士は7000人超と国内最大級の管理栄養士養成校です。[ii]
    •  保健栄養学科
      • 栄養科学専攻
        従来の食と栄養に関わる栄養士に加え、現代社会の多様性に応える新しいタイプの専門家の育成が目標です。全員が栄養士資格を取得し、「臨床検査学コース」「家庭科教職コース」「健康スポーツ栄養コース」「食品安全管理コース」に分かれ専門知識を身に付けます。給食運営や教育実習など、コースに応じた学外実習の機会を設け実践力と応用力も養うことができます。[iii]
      • 保健養護実習
        健康科学と栄養科学の専門知識を持ち、かつ高い指導力や人間性も兼ね備えた養護教諭を育成します。「長期学校体験実習」「病院実習」などで実践と理論を繰り返し、自発的な学習会により専門知識の定着と表現力向上を目指します。また、キャリア教育はもちろん、就職後の卒業生とも交流・支援を行うことで在学生との相互の交流機会を提供するなど、面倒見の良さも特徴です。[iv]
    • 食文化栄養学科:幅広い視野から豊かな食生活を提案し、地域社会や食産業の発展に貢献できる専門家を育成します。栄養や調理、食文化など多彩な選択科目とフィールド科目によって総合力を養い、3年次からは「食の文化探求コース」「食のサービスコース」「食の表現コース」「食の企画コース」「調理・製菓プロフェッショナルコース」に分かれます。卒業研究実習では企業との連携や海外での学びがあるのも特徴です。[v]
  • 栄養学部二部
    • 保健栄養学科:「食と健康」の専門知識を身に付け、社会貢献・地域貢献が出来る人材を育成します。夜間部(18:15~21:15)で本格的に栄養学を学び、家庭科教諭一種免許が取得できる日本唯一の学科で、多様な経歴を持つ社会人のニーズに応えるカリキュラムが用意されています。[vi]

3.5 特徴・資格

大学の最大の特徴は食と栄養に関する専門教育を中心としている点です。そして卒業後にすぐその知識・能力を活かせるよう、実践力を付けるカリキュラムに加え充実した就職サポートを用意しています。取得できる資格も多岐にわたっています。下の表にあるのは取得可能な主な資格ですが、特に管理栄養士、養護教諭などその後の進路に大きく関わる資格を在学中に取得する学生が多くなっているのが特徴です。

表2 取得可能な資格

(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)

3.6 名物行事や教授・講義など

最大の行事は5月末~6月初めころに行われる学園祭「若葉祭」です。お笑い芸人によるライブやプロのアーティストを招いたコンサートなどが開催されます。そして、いちばんの見どころはこの大学ならではの「食」に関する企画です。「食品サンプル作り」「My箸作り体験」などの体験型企画や在学生の手作りお菓子から来場者の投票で優秀者を選ぶ「お菓子コンテスト」、栄養相談会や骨密度測定などユニークなものが揃っています。また、フードコーディネーターを講師に招いた料理教室、地元のお店の出店や野菜、大学が開発・制作した商品の販売もある模擬店なども人気です。ちなみに、秋に学園祭を開催する大学が多い中でこの時期に行われるのは、3・4年生が実習や卒業研究、国家試験の準備などで忙しくなり参加できなくなってしまうからだそうです。

また、駒込キャンパスで11月に開催される「駒込祭は学生が食生活の大切さを人々に周知する目的で昭和26年に開催された「栄養展」が原点となっており、毎年食・栄養・健康にちなんだテーマが掲げられています。食に関する講演会や食事・農産物の販売、料理の実演、お笑いライブなどが人気の企画です。これらの他にも、1年次に行われ先生や学科の友人と親睦を深めるフレッシュマンキャンプや、夏と春の休みを利用して行われる海外研修(オーストラリア・パースでの栄養学研修、ヨーロッパ料理研修旅行、中国食文化研修など)などの行事があり充実した学生生活を送れることでしょう。

学生からの評判が良い授業としては、公衆領域の管理栄養士として特定地域の事業を計画し栄養教育の方法なども学ぶ「地域栄養教育論」や班員と協力して実際にメニュー開発を行う「外食メニュー開発実習」、日本人の食事摂取基準、各栄養素の必要量などを学ぶ「食事摂取基準論」などがあります。

また、ユニークな授業としてはライフステージごとに食事改善計画を立案し機能や嗜好に応じた献立を実際に作る「ライフステージ栄養・食事管理実習」、銘柄米の玄米を史料に栄養素の寮を分析し測定値をもとに成分表を作成する「食品化学実験」(以上実践栄養学科)、子どもの発育・発達や感染症と予防法などを学び実習も通して子供の成長を支援する能力を身に付ける「保育学」(栄養科学専攻家庭科教職コース)、各世代の目的に応じた運動や指導法について実際にその対象と学ぶ「スポーツトレーニング」方法論実習(栄養科学専攻健康スポーツ栄養コース)、学校で起こる傷病を中心に救急処理などの対応を学ぶ「学校救急看護学」(保健養護専攻)、テーブルセッティングなど食を演出するための知識やスキルを習得する「食コーディネート論実習」、学内施設で飲食店経営を行い店舗づくりや料理の商品化、接客を学ぶ「営業調理実習」、埼玉県内の地域で農業や食に関するフィールド調査を行い地場の食材や伝統食を活かした取り組みを提案する「地域食振興実習」(以上食文化栄養学科)などが挙げられます。実習系の授業が多く、様々な実践的なスキルを身に付けられるのが特徴です。

4.入試情報

様々な方式で選抜を行っており、自分に合った方式を選んで受験することができます。この分野では屈指の大学であり、非常に人気の高い大学でもあります。入念に準備して臨みましょう。

4.1 入試種別

入試種別は、一般選抜(1期~3期、大学共通テスト利用入試)総合型選抜学校推薦型選抜(指定校推薦、一般推薦、公募推薦、卒業生子女推薦)、社会人特別入試、私費外国人特別入試があります。一般選抜1期のみ坂戸キャンパスと駒込キャンパスの他に新潟、静岡、宇都宮、長野の各会場で開催されます。

下の表は主な選抜方式・学科ごとの募集人数です。

表3 入試種別・学科ごとの募集人数

(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)

4.2 受験日程/科目/難易度/平均点など

ここでは募集人数の多い一般選抜と公募推薦、総合型選抜について詳しく書いていきます。

一般選抜1期が実施されるのは1月末です。受験科目は理科、数学、国語、英語のうち2教科以上で、成績上位2科目により判定されます。2期2月上旬に行われ、理科に加え国語と英語から1教科を選択し受験します。また3期は国公立大学試験日後の3月初めに行われ、受験教科は理科、国語、英語のうちの2科目です。

大学共通テスト利用入試は大学共通テストの2教科(英語・国語から1つ、数学・理科から1つ)の点数により判定されます。2期の出願期間は2月の下旬までなので、募集人数は少ないものの「後出し」での受験が可能です。

公募推薦11月下旬に試験が行われ、小論文個別面接書類審査により選抜されます。英検やGTECの資格・スコアやスポーツ・文化活動での好成績、簿記などの検定の資格を有している場合書類審査の際に加点される制度もあります。

総合型選抜のアクティブ・ラーニング入試(AL入試)プレゼンテーション・面接課題解決型レポート書類審査、そして活動報告書により選抜されます。試験は9月中旬に行われ、最終的な合格発表は10月の末です。

偏差値は実践栄養学科で高く、同じ女子大学である大妻女子大学や実践女子大学と同じくらいでしょう。倍率も実践栄養学科は特に高く、試験方式によっては5倍を超えることもあります。センター試験利用入試の場合の得点率は75%~82%くらいで、一般選抜の合格最低点はおよそ50%~60%です。学生からの評価が非常に高い大学であり、また高い専門性を有しているため今後も人気が下がっていく可能性は低いと思われます。しかし、しっかりと対策を行えば十分に合格は可能でしょう。

5.学費・奨学金制度

学費は以下の表の通りです。学科・専攻ごとに学費は異なりますが、実習などが多いこともあるのか他の大学に比べても高い部類にあると言えるでしょう。

表4 学費

(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)

奨学金制度は大学独自のものが多数あり、経済的な理由で学業の継続が困難な学生などが利用することができます。また、一般選抜には特待生制度も用意されています。以下の表に書いてあるもの以外にも日本学生支援機構奨学金や地方自治体などによる奨学金があり、それらも利用することが可能です。

表5 奨学金制度

(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)

6.学生寮

学生寮は、大学所有のものが坂戸市にあります。坂戸キャンパスから徒歩1分、東武東上線から徒歩2分という立地にあり、マンションタイプの学生寮です。全て洋室の個室で、ベッドやデスク、冷蔵庫、洗濯機などの家具は元からついているほか、ユニットバスやトイレも部屋の中にあります。教養設備としてゼミ室や談話室、多目的室もあります。また、食事は出ないものの部屋にキッチンが備え付けられており大学の食堂を使うことも可能です。定員は100名で在寮期間は2年間、費用は入寮費が100,000円、寮費と管理費を合わせ年間660,000円です。

7.進路実績

2019年卒業生の就職率は99.2%と、かなり高い数値になっています。大学で学んだ専門的な知識を活かせる業界に進む学生が多いようです。

7.1 進学・就職実績

学科・専攻ごとの就職率は、実践栄養学科が99.1%、保健栄養学科栄養科学専攻が100%、保健養護専攻が96.2%、食文化栄養学科が100%と非常に高くなっています。最大の特徴は専門性の高い職種に進む学生が多いことでしょう。実践栄養学科からは半数以上が管理栄養士・栄養士になり、栄養科学専攻からは合わせて65%以上が栄養士・臨床検査技師・家庭科教諭になりました。更に顕著なのは保健養護専攻で、84%が養護教諭として就職しています。また業種にも特徴があり、病院や給食会社、ドラッグストアや保育園などで管理栄養士・栄養士として活躍したり、食文化栄養学科からは食品メーカーや外食産業、卸・小売業に進んだりする学生が多くなっています。
その一方で進学者は少なく、2019年度卒業生はわずか6名が進学したのみでした。

7.2 大学院・研究機関の概要

大学院には栄養学専攻保健学専攻の2つの専攻(修士課程・博士課程)が置かれています。在学者は合計40人ほどで、その半分以上が栄養学専攻に属しています。専門性の高いリーダーを輩出しており、修了生はそれぞれの知見を活かし食産業や医療、研究や行政、更に国際社会から地域保健まで幅広い分野で活躍しています。
その他、学園には栄養科学研究所が設置されており、「健康科学部門」「実践栄養学部門」「生活文化・社会科学部門」「スポーツ栄養学部門」の4部門で研究を行っています。

8.大学の雰囲気/メリット/体験談

女子栄養大学の最大のメリットは、自分の就きたい仕事に直結した学びができることです。調理実習や学校体験実習、介護体験などの実践的な授業がたくさんあり、必要なスキルを身に付けることができます。そのための実習・実験設備も整っています。また、古くから食と栄養に関する分野の先端的な研究を行ってきたこともあって大学の知名度も高く、企業との共同開発なども含め研究室の連携先も豊富にあるのも魅力です。

管理栄養士国家試験の合格率の高さも大きなメリットです。2020年3月に実施された国家試験では合格率99.6%で、合格者数も日本一でした。また臨床検査技師国家試験の合格者数は36名(合格率78%)、養護教諭採用試験の合格者数はのべ57名(合格率92%)と、こちらも高い数字になっています。特に養護教諭の採用倍率は約7倍と非常に高く、その中でこの合格率を出しているのは大学の教育が優れている証拠だと言えるでしょう。

高い就職率の理由は充実した就職サポートにもあります。コミュニケーションスキルアップ講座、メイクマナー講座、模擬面接会、業界研究・企業セミナー、内定者の話を聞く会などのイベントを開催しており、また就職活動前に個人面談を行うことできめ細かい支援に役立てています。この成果もあってか、卒業生へのアンケートでは87%が就職先に満足したとの回答でした。「栄養学なら栄養女子大学」というネームバリューも活かせるかもしれません。

最後に学生生活についてです。4年間同じクラスの人と授業を受けるためクラス仲は非常に良くなるそうです。また実習などグループで学習することも多いためそこでも友人ができます。一方で女子大ということもあり男子との接点はありません。恋愛はインカレのサークルやアルバイト先で発展することが多いのではないでしょうか。近隣の東洋大や東京電機大学とのサークルに所属している人も多いようです。サークルは硬式庭球部、マラソン部といった体育系や美術部などの文化系のものがあります。また「食育ボランティア~ニコニコ会~」(創作劇や、保育園や食育イベントでのエプロンシアターを行う)や「点心部」(餃子などの点心料理を作る・食べ歩く)、「EIDAI COOKING STUDIO」(50歳以上の方や奨学生、障がい者を対象に料理教室を開催する)、「スポーツ栄養サポート部~KSC~」(スポーツ栄養士や栄養教諭を目指す学生が集まり、子ども達とサッカーをしたい食育トレーニングを行ったりする)、「アグリネイチャー」(農家の畑で手伝いをしながらお話を聞き、校内で野菜を育てて調理活動も行う)などはこの大学ならではのユニークなサークルでしょう。

実習や試験勉強など、他の大学と比べてもかなり忙しいかもしれません。しかし、多くの卒業生がこの大学での学びが役に立ったと感じているようです。真面目な友人たちとともに目標に向かって頑張れる、そんな環境が一番のメリットでしょう。

参考

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