1979年から行われている世界共通のテスト。単なる知識としての英語力ではなく、実用的な英語力を測ることができます。
また、他の資格と異なり、結果は合否ではなくスコアとして提示され、大学入試や就職活動で評価の対象とされることが増えています。
1. TOEICの種類
TOEICにはTOEIC Tests/TOEIC Bridge Testsの2種類があります。
TOEIC Tests
日常会話やビジネスで使える英語力を測るテスト。「聞く・読む・話す・書く」の4技能を測ることができ、目的やレベルに応じて以下の組み合わせから選んで受験することが望ましい。
- TOEIC Listening & Reading Test
- 聞く・読む能力を測ることができる。難易度としては初級から上級まで出され、英語によるコミュニケーション能力を幅広く問われる。
- 内容:リスニング約45分間+リーディング75分間
- テスト形式:マークシート
- スコア:10~990点(5点刻み)
- 実施頻度:年10回(2月、8月以外の毎月)全国約80都市にて実施
- TOEIC Speaking & Writing Tests
- 話す・書く能力を測ることができる。国際的なビジネスシーンにおいて英語で発信できるようになりたい場合に向いている。
- 内容:スピーキング約20分間+ライティング約60分間
- テスト形式:パソコンとヘッドセットを利用
- スコア:各0~200点(10点刻み)
- 実施頻度:年24回(毎月、午前・午後に分けて1日に2回)実施
- TOEIC Speaking Test
- 日常生活やビジネスシーンにおいて、英語が堪能な相手と効果的なコミュニケーションをとるために必要な英語を話す能力を測ることができる。
- 内容:スピーキング約20分間
- テスト形式:パソコンとヘッドセットを使用
- スコア:0~200点(10点刻み)
- 実施頻度:年48回(毎月、1日に4回)実施
TOEIC Bridge Tests
初級から中級者を対象とし、内容は日常会話が出題される世界共通のテスト。「聞く・読む・話す・書く」の4技能を測ることができ、以下の2種類に分かれる。
- TOEIC Bridge Listening & Reading Tests
- 日常生活のコミュニケーションで必要とされる英語で聞く・読む能力を測定できる。
- 内容:リスニング約25分間+リーディング約35分間
- テスト形式:マークシート
- スコア:30~100点(1点刻み)
- 実施頻度:年4回、全国13都市で実施
- TOEIC Bridge Speaking & Writing Tests
- 日常生活のコミュニケーションで必要とされる英語で話す・書く能力を測定できる。
- 内容:スピーキング約15分間+ライティング約37分間
- テスト形式:パソコンとヘッドセットを使用
- スコア:30~100点(1点刻み)
- 実施頻度:年8回、全国3か所で実施
以上がTOEIC Testsの種類となりますが、ここではTOEIC Listening & Reading Test(以下TOEIC L&R)について詳しくみていきます。
TOEIC L&Rは2018年度には全国で約250万人の受験者数を誇り、団体受験、個人受験ともに年々受験者数を増やしています。ETSの調査によると、受験者の約半数が大学卒または大学在学中で、8割が6年以上の英語学習経験を持つという結果が出ており、中級以上の英語能力を持つ人に適当なテストと言えます。英語学習としてのみならず、就職活動や会社での昇進・昇格を目的とする人も多く、また、大学によっては単位として認定されたり卒業要件とされていたりもします。
2. TOEIC L&Rの構成
リスニングセクション(約45分、計100問)
- Part1:6問、4択
- 問題冊子に印刷された写真を見ながら、その写真を正しく説明した文章を聞き取り選択する。
- Part2:25問、3択
- 短い質問文を聞き、それに対する答えとして相応しい返答を聞き取り選択する。
- Part3:39問、4択
- 2人あるいは3人による会話を聞き、その内容についての問に対する正しい答えを選択する。1つの会話につき3題問われる。
- Part4:30問、4択
- 1人の人が読み上げるやや長めの文章を聞き、その内容についての問に対する相応しい答えを選択する。1つの文章につき3題問われる。
リーディングセクション(75分、計100問)
- Part5:30問、4択
- 短い文章の空欄補充問題。品詞や語彙を問われる問題が多い。
- Part6:16問、4択
- やや長い文章の空欄補充問題。品詞や語彙を問われる問題のほか、1文まるごと抜けている問題が必ず1問出題される。
- Part7:55問、4択
- フライヤーや、ホームページ、チャットの画面、メールのやり取り等を読み、それについての問いに対する相応しい選択肢を選ぶ。
3. 何点くらいとればよいのか?
実施回によってばらつきはありますが、全体平均スコアは570~590台です。2018年度の調査では、大学生の平均スコアは621となっており、就職などでアピール材料としたい場合は最低でも600台前半はとっておきましょう。
以下のようにTOEIC公式サイトでは、レベルA~Eまでの5段階の指標がコミュニケーション能力の目安として設けられているので、それぞれの目的に合わせて自分の目標を設定してテストに臨みましょう!
- レベルA:スコア860~
- Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる。
- レベルB:スコア730~
- どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。
- レベルC:スコア470~
- 日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。
- レベルD:スコア220~
- レベルE:スコア220未満
4. なぜTOEICを受けるべきなのか?
学生のうちに受けておくべき資格を考える中で、日商簿記検定やMOS、秘書検定…など様々な資格が思い当たりますが、どこを調べても“TOEICは受けておくべき”という文言を目にするという経験はありませんか?実際に学生に人気な資格第一位はTOEICとなっています(リクルート調べ)。
ではなぜ、TOEICを受ける学生がそんなに多いのでしょうか?
その理由は大きく2つ、「大学での単位取得のため」、「就職活動のため」です。
- 単位取得のため
ETSの調査によると、受験者の約4分の1が受験の目的を「卒業に必要なため」と回答しています。実際TOEICスコアを単位として認定している学校は全国で501校にもなります。
例えば、法政大学は最大8単位、学習院女子大学では2単位、東京女子大学では最大8単位、日本女子大学では最大8単位が認められます(学部により要件が異なるので注意)。自分の大学が認定活用校である場合はぜひTOEICを受験しましょう!
- 就職活動のため
ETSの最新の調査によると受験者の約4分の1が受験の目的を「就職活動のため」としています。では就職活動においてTOEICのスコアを持っていると何が有利なのでしょうか?また、ほかの英語資格とは何が違うのでしょうか?
TOEICを受験しておくと有利?
TOEIC公式の調査によると、約70%の企業が「採用時にTOEICスコアを参考にしている」と回答しています。また、14%の企業が「将来的に参考にしたい」と回答しており、今後ますますTOEICの重要度が増してくると思われます。
確かに、TOEICスコアだけが直接的な内定の要因となる可能性は低いです。しかし、受けていないと不利になる可能性は大いにあります。その理由としては、
- TOEICのスコアで足切りをする企業がある。
- インターンシップのエントリーの時点でTOEICのスコアの記入を求められる可能性がある。
- 国内で最も普及している英語試験であるため知名度が高く、他の英語試験に比べ自身のレベルが相手に伝わりやすいのでアピール材料に適している。
- 公務員試験やその他一般企業での二次試験など、TOEICのスコアを加点対象とする場合がある。
の以上4点が挙げられます。近年はどの業種でも英語力が求められる傾向にあるため、大学1,2年で最初に何か資格を取ろうと思ったらTOEICを受験することをおすすめします。
また英語力という面に限らず、ハイスコアをとっておくことで、「目の前の課題に対し努力できる人だ」という印象を与えられるためイメージアップにも繋がります。
TOEFLやIELTSとの違いは?
英語能力を計る資格はTOEIC以外にもありますが、どう違うのでしょうか。
- TOEFL
日本ではTOEICと比べると普及していないイメージがありますが、世界的にはTOEFLを評価対象とする企業の方がメジャーです。そのため、外資系企業を狙う場合はこちらを受験しておくことをおすすめします。
また、TOEICがビジネス英語に偏っているのに対し、TOEFLは大学機関に学問的英語の能力を計るのに適しているため、留学を考えている場合もTOEFLスコアが求められることが多いという特徴があります。しかし、外資系や留学希望の人でもTOEFLを受ける足掛かりとしてTOEICの受験をしておくと良いでしょう。
- IELTS
IELTSはTOEICやTOEFLに比べると日本ではやや普及率が低いですが、世界で年間300万人が受験するほどの規模の英語試験です。この試験は海外留学や海外移住の際に英語力の証明となるもので、大学や大学院で使う英語力を計るテスト(アカデミック・モジュール)と学業以外の研修や移住のための英語力を計るテスト(ジェネラル・トレーニング・モジュール)の2つのテストから選択することができます。一般にTOEICやTOEFLと比べると、就職に使われることは少ないです。
TOEIC IPとは?
TOEICの受験形式には2パターンあり、一般的な、個人あるいは団体で申し込んで各地の会場で受験するテストを「公開テスト」と呼びます。一方、学校や会社単位で申し込み、そこで実施される「IPテスト」という団体特別受験制度が存在します。
IPテストで受験した場合、試験の運営・管理を行うのが協会ではなく各団体になり、自身の会社や学校で受験できる上、受験料も1000円以上安価なため、大学1、2年生で初めて受ける、またはお試しで受験してみたいといった人にはおすすめです。IPテストで受けると協会の運営によるものではなくなるため、公式認定証がもらえない、というデメリットもありますが、7割以上の企業が採用時に「公開テスト・IPテストを問わない」としているため心配は無用です。
<慶應義塾大学のTOEIC事情>
慶應義塾大学では商学部のみ英語のクラス分けにTOEIC L&Rが使われ、その点数によって基礎・中級・中上級・上級に振り分けられるシステムとなっています。そのため、商学部の学生は1、2年生の始めに半強制的にTOEICを受験することになります。しかし、その他の学部ではTOEICの受験が義務付けられていない上、TOEICスコアが単位として認定されることもないので1年次から全員が積極的に受験するという雰囲気ではなく、就活が始まるのに合わせて3年の始め頃に受験し始める人も多い印象です。
しかし、現実的には1年や2年のうちに受験しておくことをおすすめします。その理由は大きく2点です。
ですから、1年生の時点でしっかりと勉強し高得点を獲得しておけば、2年生や3年生の時に他の資格の勉強や就活に打ち込めるというメリットがあります。特に、TOEFLなどの別の英語資格を取りたい場合には、英語学習の一環として早いうちからTOEICを受験することをおすすめします。