高崎経済大学、通称「高経大」はその名の通り群馬県高崎市にある公立大学です。全国でも数少ない「地域政策学部」が存在し、また観光政策学科など先駆的な学科を有しています。群馬だけでなく全国から学生が集まるこの大学では様々な背景を持つ学生との交流によって広い視野を得ることができます。将来のために本気で勉強するもよし、学生生活を楽しむもよし、部活に本気を出すもよし。自由度の高いこの大学ではどんな4年間を過ごすのにも最適です。今回はそんな高崎経済大学について見ていきましょう。
2020年で創立から68年を迎えるこの大学は、戦後に市立大学として設立した経緯もあり、地域に根付いた教育・取り組みをしています。政界や経済界の第一線で働くOB・OGも多く、将来国内外の経済の場・地方自治の場で活躍できる人材の育成を目指しています。
大学の起源は1952年に創設された高崎市立短期大学商経科です。1957年に高崎市立短期大学が廃止され4年制大学が設置されることになり、高崎経済大学経済学部経済学科として発足しました。その後地域政策学部や大学院が設置され現在に至ります。
大学の目的は「学術研究の中心としての知識・専門学術の教授と、心理と平和を希求する人間の育成、そして学理とその応用の攻究による国内外・地域の向上発展への貢献」です。また、学生育成目標として、
の育成を掲げています。i
研究活動の一環として「知の拠点化推進室」を設置しています。ここでは全学を巻き込んで教員の研究の支援・グローバルな研究の推進を行い、地域の研究拠点となることを目指しています。具体的な取り組みとして高崎市立高崎経済大学附属高校との連携(大学のゼミと高校のクラスによるコラボゼミ、教員による作文指導・進路講話など)や地域放送局でのラジオゼミナール、種々の地域・社会貢献(学生による地域の子どもへの環境学習支援や高校生のためのスポーツ大会の開催、地域のボランティアへの参加など)、地域課題研究(高崎市における観光戦略研究や環境学習モデルの提案、まちづくり手法の研究など)があり、精力的な活動を行っています。
小泉内閣で国土交通副大臣を務めた佐藤静雄さんなど政界や、大企業や金融機関の社長など経済界、他大の教授など学術界に卒業生を輩出しています。また、文学界や芸能界、アナウンサーなどの様々な分野で卒業生が活躍しています。
経済大学という名前だからといって経済のみを学んでいるわけではありません。経済学部と地域政策学部の2学部が置かれ、地域と密着しながらも国際関係にも視野を広げた教育を行っています。少人数のゼミナール授業では実践力も養われ、ビジネスなどの現場ですぐ活躍できる能力が身に付くでしょう。また、学科に分かれるのは2年次からになります。成績によって行ける学科が変わってくるので、入学後もしっかり勉強することが他の大学にもまして重要です。
学部は経済学部と地域政策学部の2つが設置されています。沿革の章でも記したように、開学当初は経済学部のみでしたが1996年に地域政策学部が新設されました。経済学部には経済学科、経営学科、国際学科の3つが、地域政策学部には地域政策学科、地域づくり学科、観光政策学科の3つが、それぞれ置かれています。
学生数は全体で4000人強となっています。各学部・学科の定員は以下の通りです。例年定員よりはやや多い人数が入学しており、1学年は100人前後となっています。ただし、近年は学生数が減少傾向にあるようです。
経済学部:480人(経済学科200人、経営学科200人、国際学科80人)
地域政策学部:420人(地域政策学科150人、地域づくり学科150人、観光政策学科120人)
キャンパスは高崎市にあります。最寄り駅は信越本線北高崎駅ですが、自転車で15分ほどかかるためJRの高崎駅から出るバスを使う学生が多いそうです。高崎駅からの所要時間は約20分ですが、本数の少なさや混雑、渋滞もありやや不便だという声がありました。一人暮らしの学生も多く、大学近くに住み自転車で通う学生も多くなっています。キャンパス内には校舎・図書館などの他運動施設も豊富にあります。野球場やテニスコートはもちろん、グラウンドは陸上競技場なども含め4面もある恵まれた環境です。
大学の周辺は住宅地で遊び場などは少ないようです。ただ、スーパーやコンビニ等はあり買い物には困らず、飲食店も少ないもののいくつかあります。遊びに行ったりする場合は自転車を使うようで、生活には自動車や自転車が必須ではないでしょうか。
ここでは各学科について細かく見ていきます。
経済学部ii:1年生では基礎から学び、数学の基礎固めや語学、また政治学や哲学、心理学、自然科学などの幅広い教養を身に付けます。1年生の終わりに学科を選択し、2年生から学科ごとの専門科目の学習に入ります。2年生後期から始まるゼミが4年生まで続き必修なのが特徴の一つです。
地域政策学部vi:地域社会と深く関わってきた地方公立大学としての社会的責務を果たすべく、「地方分権社会を担う地域リーダーの育成」を掲げ全国で初めて設立された学部です。自治体や企業、NPOなど官民双方にわたり地域問題を解決できる人材の育成に努めています。1年次は「基礎教育科目」により基幹教養や一般教養や語学、情報・統計の基礎を学び、主に2年次以降から「専門教育科目」に移行します。進む学科が決まるのも2年次の後期です。所属する学科以外の講義も自由に履修できるため多様な学びが可能です。
教育上の特徴としては必修のゼミナール授業が挙げられます。少人数で専門領域の知識を深め、将来社会で実践できる課題解決能力を養うことができます。
また、国際交流・留学を積極的に行っていることも特徴の一つです。国際交流センターでは海外からの留学生の受け入れや修学支援、高崎経済大学生の海外派遣の企画立案、その他の学生の国際交流などを取り扱っています。大学としてアメリカやヨーロッパ、アジアなど13か国15の大学と提携しておりいくつかの大学とは交換留学を行っています。海外留学や海外インターンシップ、フィールドワーク、ボランティアの際には助成金が出る場合もあります。
資格については、両学部で教職課程を設置しており、中学校の社会科や高等学校の地理歴史・公民、商業科の教員免許の取得が可能です。また、地域政策学部では社会福祉主事や社会教育主事、学芸員の資格が得られます。
大学の最大の行事は学園祭である「三扇祭(みつおうぎさい)」です。毎年10月末~11月初めに開催され、2019年で第62回を迎えました。部活動・サークルなどの参加団体による模擬店や出し物、音楽団体やプロのミュージシャンによるライブ、お笑い芸人を招いたお笑いライブや俳優によるトークショー、更には陸上自衛隊の音楽隊による演奏など様々なイベントが催されます。この他にもステージ企画として教授にも参加を募って行われる大喜利王決定戦、来場者も参加してクイズやビンゴ大会などをする「ゆ~がったチャンス!」、のど自慢大会、模擬店参加団体の中で最もカッコイイ・カワイイ学生を決める「ミセイチコンテスト」、早食いチャンピオン決定戦、ダンスコンテストなどが開催され、ステージを見るだけでも飽きずにいられるでしょう。
もう一つの行事として「鶴鷹祭」があります。これは山梨県の公立大学都留文科大学との総合体育対抗戦です。(「つる」文科大学と「たか」崎経済大学の名にちなんでいます。)毎年6月下旬に開催され、様々な団体が参加しています。
学生による評価の高い授業には公害などを取り上げて授業する「環境経済学」(地域づくり学科)、環境問題と企業活動を結びつけたESG投資についてグループワークなどを通して学ぶ「環境会計」(地域づくり学科)、主に株式について学ぶ「会社法Ⅰ」(経済学部)、データ等から観光業界各社の現状や問題を分析し、アプリを使って学生も参加する「観光経営論」(観光政策学科)、労働者問題を取り扱い労働時間やブラック企業について学ぶ「人的資源管理」(経営学科)などがあります。
また、瑞宝重光章を受章した経済学部の名誉教授で元学長の石井學さん、近年注目を集めているESG投資の第一人者である経済学部教授で副学長の水口剛さん、加賀市長なども務め瑞宝中綬章を受章した地域政策学部元教授の寺前秀一さん、地方自治論や自治体経営論、市民参加によるまちづくりなどの専門家である地域政策学部教授の佐藤徹さんら著名な教員も多数所属しており、レベルの高い教育を受けられるのも特徴です。
入試の特徴としては、全国の国公立大でも珍しい中期試験があることです。また、地方のいくつかの都市で試験を実施していることが全国から学生が集まる背景となっています。難易度や倍率が特別高いという訳ではありませんが、70%ほどの得点率は必要なので十分に対策をして臨みましょう。
学部の入学試験には一般入試の前期・中期・後期試験、推薦入試(推薦、推薦Ⅰ、推薦Ⅱ)、その他編入や留学生、帰国生などのための特別入試があります。学部によって設けられている入試種別には違いがあるので注意が必要です。推薦Ⅱ入試はセンター試験利用入試となっています。また、一般入試の個別試験は高崎経済大学の他札幌や東京、大阪、福岡などの都市で、推薦Ⅰ入試は高崎経済大学と仙台で開催されます。
表1 入試種別について
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)
一般入試の日程は他の国公立大学と同じで、前期試験が2/25、中期試験が3/8、後期試験が3/12に行われます。
学部ごとに試験科目を見ていくと、経済学部の前期試験はセンター試験4教科(外国語と国語・数学などから選択)に加え個別試験で2教科(5科目の中から選択)の受験が必要です。また中期試験はセンター試験3教科(外国語と国語などから選択)と個別試験2教科(選択)が課されます。地域政策学部の前期試験には5教科型と3教科型があり、個別試験2教科の得点に加え5教科型はセンター試験5教科(国語、数学、理科、外国語に加え地歴・公民から選択)、3教科型はセンター試験3教科(外国語に加え国語などから選択)の得点で選考されます。また後期試験はセンター試験3教科と個別試験として小論文の点数により評価されます。
経済学部の推薦入試は英語重視推薦、全国推薦、地域推薦など4種類があります。調査書等の書類審査に加え、11月下旬に行われる英語の筆記試験、小論文、面接試験などの点数によって選考されます。地域政策学部の推薦Ⅰ入試についても調査書などの書類審査と小論文、面接試験で評価されます。また推薦Ⅱ入試は調査書や自己推薦書などに加えてセンター試験3教科(外国語に加え国語などから選択)の点数によって選抜されます。
大学の偏差値は、国公立大学としては信州大学などと同じレベルにあります。やや地域政策学部の方が倍率が高くなっていますが、センター試験で70%~80%、合計で70%ほどの得点を取れば十分に合格は可能でしょう。
学費は全学で共通となっていますが、入学料に関して地元の学生を優遇する制度があります。詳細は以下の通りです。(ただし、地元出身とは本人または配偶者、1親等の親族が引き続き1年以上高崎市に住所を有する者のことです。)
表2 学費について
[文字列の折り返しの区切り] (髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)
大学独自の奨学金制度の他、授業料の減免制度もあります。奨学金は貸与・給付のものが用意され、減免制度は天災などの災害を受けた場合や学費負担者が死亡・病気になった場合、失業した場合などに適用されます。奨学金制度の一部を以下に記します。
表3 奨学金制度
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)
これらの他にも、課外活動や研究活動などで優秀な成績を残した学生への支援やTOEIC等の試験で好成績を残した学生への表彰、日本学生支援機構奨学金や留学生奨学金などもあります。
高崎経済大生専用の学生寮はありません。しかし、学生は群馬県・高崎市以外の出身者の割合が高く(約7割が群馬県外の出身)一人暮らしの学生が多いようです。大学から自転車や徒歩で通える範囲内にはマンションやアパート、学生アパートが多数ありまたスーパーなどもあるため生活には困らないでしょう。家賃も比較的安くなっています。
平成30年度の就職率は、経済学部で98.9%、地域政策学部で99.0%という高い数字になっています。1年次から支援を積み上げる「キャリア形成年次ピラミッド(キャリア支援指針)」を策定して様々なイベント等も開催しており、学生の進路指導・キャリア支援に対する評価も高いようです。
就職先としては、いずれの学部からも金融・保険業、情報通信業、卸売・小売業に進む学生が多く、経済学部からは製造業に、地域政策学部からは公務に就く学生が比較的多い傾向にあります。就職先の地域を見ると群馬県や高崎市内に本社を置く企業や近隣の北関東の県や長野県に就職する学生が多くなっています。また、全国から学生の集まる高崎経済大学では卒業後地元に戻る学生もおり、UターンやIターンを支援する制度も用意されています。
キャリア支援の軸である「キャリア形成年次ピラミッド」は、入学時から体系的に支援を続けることで社会での活躍を支える指針です。1年では職業意識の啓発や視野拡大の機会提供、2年では職業選択への意識向上の支援、3年では就職力向上の支援、そして4年では自己実現の支援を目的とした事業を行っています。キャリア支援の具体的な内容としては、キャリア支援センターでの就職相談や就職ガイダンス(筆記試験や企業研究、ESの書き方などについて)、セミナー(女子学生向けや留学生向け、Uターン志望者向けなど対象者別)、合同企業説明会などのイベント、インターンシップのサポート、筆記&ES対策、GD&面接対策、公務員試験対策講座、卒業生との交流イベントなどがあります。
大学院に進学する学生はそれほど多くありませんが、平成30年度は経済学部から10人が、地域政策学部から13人が進学しました。地域政策学部から高崎経済大学大学院地域政策研究科に進む学生が8人で最も多く、また京都大学や早稲田大学など他大の大学院に進む学生もいます。
大学院には地域政策研究科と経済・経営研究科があり、前期課程・後期課程が置かれています。また、地域政策研究科には地域政策専攻が、経済・経営研究科には現代社会経済システム専攻と現代経営ビジネス専攻の2つがあります。大学院の学生数は合計30人ほどとそこまで多くはありません。最も多いのは地域政策専攻で、1年・2年合わせて20人ほどの学生がいます。
その他研究機関として知の拠点化推進室と地域科学研究所の2つが設置されています。
全国津々浦々から学生が集まってくるので、色々な背景を持った友人に出会うことができます。そこには合わない人もいるかもしれませんが、一生の友人になるような人もいるのではないでしょうか。卒業後も全国にコミュニティやネットワークが出来るのは大きなメリットと言えます。
部活動やサークル活動は盛んな方で、サークルの数もスポーツ系から文化系、ボランティア団体やNPO団体まで非常にたくさんあります。体育会に所属する運動部にはアメリカンフットボール部や野球部、サッカー部の他、ローバースカウト部やワンダーフォーゲル部など27もの部活があります。いくつかの部活の合同で行われるコンパや合宿などのイベントもあり、他の部活の人と交流することもできます。また公認の文化サークルは軽音部やハイキング部、都市研究会、山野愛好会などが活動しています。これらの活動を通して他の大学や地域の住民とも繋がりが出来るのも魅力の一つです。
友人や恋愛は部活やサークル、ゼミやアルバイトなどで関係を作る学生が多いです。規模がそれほど大きい大学ではないので、他の学部や学科の人とも仲良くなることができます。ただし、男女比は7:3ほどなので男子が学内で彼女を作るのはなかなか難しいこともあるかもしれません。学内の掲示板で家庭教師も含めたアルバイトの紹介もしています。時間割の自由度が高い分、学業とアルバイトや部活動の両立も十分に可能で、「学生生活を楽しみたい学生にもオススメできる!」と声が多くありました。
施設の充実も大学のメリットの一つです。比較的新しい建物が多く、各施設に設置されたラウンジは空き時間に飲食やグループの集まりなどに利用できます。図書館の他にコンピュータ設備に特化した校舎もありレポートを書く時や調べものの際に利用することができます。またキャンパスの大きさもそれほど大きくないので校舎間の移動は楽で場所もすぐ覚えられるようです(狭いという不満の声もありますが)。人気スポットは1号館の6階です。ここからは高崎の街が一望できるので、多くの学生の休み場となっています。7号館には生協の購買・書籍部や2つの食堂があります。1つの食堂は夜間も営業しているので一人暮らしの学生にとっては夕食もここで済ませられます。遊ぶことに関して言えば、地方大学ということで「田舎」だというイメージを持つかもしれませんが、関東圏にあるので東京に遊びに行くのにも不便ではありません。
最後に、やはり将来ビジネスや地方自治の現場で働きたい学生にとっては最高の環境と言えるでしょう。学生主体で行われるゼミが多く、何をしたいかはっきりとは決まっていない学生も4年間で将来像を描くことができます。実際に金融関係の仕事や地方公務員として働いている人が講義に来たり、そのような卒業生と話したりする機会もあるので実感を持って将来を考えることができるでしょう。特に地域政策学部は全国で見ても珍しい学部です。自分の地元に愛着がありもっと活性化させたいという方は、ぜひ入学を考えてみてはいかがでしょうか。