初学者必見!「機械工学」とは何を研究するのか?

大学はこんなところ; 専門科目の概要を少しだけ紹介します!

機械工学という分野で、何をするのかというと「機械を設計・制御するために必要となる数学と力学、それらの応用の総合的・体系的な学習」というものがメインとなります。これだけではピンとこないでしょうから、順番に説明していきましょう。

数学

まずは数学です。これは理工学系ならできないと話になりません。力学(物理)というのは、8~9割数学ですので、最初に数学、特に計算処理をマスターしておく必要があるのです。よく使うのが「微分方程式」と「行列」です。公式だけではなく、その意味や使い方まで理解してから次に進む(つまりコンピュータの力を借りる)ということを意識して、ある程度簡単なものは手計算で処理できるようにします。いずれも高校で習ったことの延長線上ですが、経験や細かい内容が大事になってきます。

簡単に説明しますと、微分方程式とは、方程式の中に微分された関数が含まれているというものです。例えば、関数f(x)とf ’(x)が方程式に入っている、という感じです。こういう場合、微分或いは積分をしたら定数倍になる、などの特徴から、指数関数、三角関数などで解を予想できます。うまく予想できるかどうかは経験によりますし、正しい解を導き出すためにはもう少し必要なことがあります。そこを追加するのが微分方程式の学習ですが、勿論、数学Ⅲの微積分が完璧にできることが前提です。

[図1, 微分方程式(左)と行列の計算(右)[1]]

続いて行列ですが、かつては数学Cという高校の教育課程で扱われていたもので、数学Bのベクトルの延長でもあります。2行×2列、3行×4列、などのように書き並べられた数値をどのように計算していくのか、というのがここでの内容です。これが特殊なもので、行列同士の積を考える場合、掛ける順番を入れ替えると結果が変わってしまいます。これによる計算ミスを防ぐため、高校物理では「文字の順番に気をつけなさい」と言われるのです。高校物理では、1つの物体の並進運動または回転運動のどちらか一方だけに注目していたので問題なかったのですが、大学では、並進・回転は同時に扱いますし、2つ以上の物体の運動を同時に解析するケースも出てきますので、その時に行列が必要になってきます。

力学

ここまで数学の話でしたが、あくまで序章だと思ってください。本題の力学をここから説明していきます。「力学」と書いていますが、工学の世界では「五力」という呼び名があり、

  • 力学
  • 熱力学
  • 材料力学
  • 流体力学
  • 機械力学

の5つに分けられます。基本的には「力学」を最初に理解して、それから他の4分野に移り、それぞれを並行して少しずつレベルアップさせていくという流れになります(よく言われる、「体系的に学ぶ」というのはこういうことです)。

力学

まずは「力学」です。高校物理の力学の範囲の延長線上となる分野で、ma=F の形で習った運動方程式を更に発展させ、速度に比例する外力、変位に比例する外力など、より複雑な微分方程式の形で運動方程式を立て、解いていくというところからスタートします。また、剛体の力学もレベルアップして、大きさのある剛体の回転運動(回転方向にも加速度を与える)を考え、慣性モーメントという新たな要素を導入します。以上を理解して次に進みます。

熱力学

続いて「熱力学」です。これは、他の4つの力学とはやや異なり、エネルギの話がメインとなる分野です。最初は、高校物理で扱った熱力学第1・第2法則、ガスサイクルを扱い、その後、エネルギの考え方の追加要素としてエントロピやエクセルギの考え方を導入し、さらに気相と液相の相変化を視野に入れた水蒸気サイクルを扱います。以上を踏まえて、更に伝熱(伝導・対流・輻射)のメカニズムを学びます。

材料力学

「材料力学」では、剛体とは違い、長さや太さを考えた物体(梁・柱などが多いが)に荷重をかけた状態を想定し、曲げやねじり、応力、ひずみなどを解析します。物体の剛性や曲げ・ねじりモーメントなどを導入し、静的な力学モデルの解析を多く扱います。

[図2, 材料力学の例題]

流体力学

「流体力学」というのは、気相や液相といった「流動性のある物体」に力学の解析を当てはめるという分野です。1L分の流体を考えたとしても、その形や密度、圧力は常に変化してしまい、固相に比べて解析の式や計算手順も複雑になります。まず静止流体から始まり、その後1次元・準1次元流れの解析を扱い、最終的には平面上の湧き出しや渦巻きポンプの流れといった、簡単な2次元流れの解析を扱います。根本からきちんと理解していないと特に厳しい分野ですが、運動方程式や運動量保存則、エネルギの考え方など、これまで扱ってきた力学に通じるものですので、必要以上に恐れることはありません。

機械力学

最後は「機械力学」です。不思議な名称のつけ方ですが「振動学」とも呼ばれ、力学の中の「振動」に関する内容だけにフォーカスした分野です。高校物理では「単振動」で扱われた1自由度系の振動の解析の応用からスタートし、2自由度系の振動も扱います。直動だけでなく回転方向の微小角振動も扱い、さらに減衰や強制振動など、振動が起きる基本的な状況を一通り見ていくことになります。

制御

ここまで「5力」の内容でしたが、機械工学は機械の「制御」の部分もできなければ成立しないので、「制御工学」も学びます。これは大雑把に言えば「ほぼ数学」です。まずは力学モデルを元に運動方程式と立て、入力と出力を決めます。例えば、電圧の印加が入力で、それによって回転するモータのトルクが出力といった感じです。そして、得られた運動方程式をもとに、入力と出力をつなぐ関数は何なのか、出力側が危険な挙動をしないかなどを計算によって解析する、という作業がメインで、そのために最初に示した数学の内容が使われます。

まとめ

以上の「数学」「5力」「制御工学」の7分野が大学で学ぶ機械工学の基本となる内容です。この他、これらを実際の機械に応用した場合の基礎的な解析方法、「設計・製図」やそのための強度計算、機械製造時に必要な材料、加工の知識も学びます。さらに、プログラミングや電子工学の基本も学び、ここまでやってようやく機械工学として成立します。

「総合的・体系的な学習」というだけあって、内容の多さ、順番における制約が大きいのも特徴です。大学によっては必修科目だけでほぼ1週間が埋まったり、「この学年のこの時期に単位を取らないと次に進めない(或いは留年確定)」ということがあったりします。しかし、それだけの量をこなすだけあって、やり甲斐は勿論、幅広い知識を得られます。何より「ここに自分のやりたいこと、好きなものがあるんだ!」と思って集まってくる人が多いため、自分の世界に入り込みたい人、オタクと言われて周りから敬遠されてきた人こそ向いているといえます。機械だけでなく、熱中できるものがある人、生き物の体の動きに興味がある人に是非学んでほしい分野です。

参考文献
  • [1] 改訂 線形代数要論 培風館 青木利夫・大野勝寛・川口俊一 p.26 2016年
  • 微分積分学 横浜図書 高橋渉 pp.159 , 160 2013年

この記事を書いた人