成城大学は高級住宅街として知られている成城学園前にあり、閑静な住宅街の中で落ち着いた雰囲気が流れています。
成城大学と聞くと「お金持ち・セレブ」といったイメージを持つかもしれません。実際に大企業の社長など経済界にも多数の卒業生を輩出しており、学生たちも落ち着いた人が多くなっています。
そんな成城のワンキャンパスには全ての学部が置かれており、規模もそこまで大きくないので学部・学科が違う知り合いにもよく遭遇するそうです。ここでは、そんなアットホームな空気の中で行われる教育・学生生活について記していこうと思います。
成城大学を運営する成城学園は2017年で創立100周年を迎えました。そんな歴史あるこの大学ですが、近年はグローバル化に対応すべく変化しています。
また他の大学に先駆けて「グローカル研究」を行うなど時代をリードする姿勢も見せています。
成城大学を運営する成城学園の歴史は1917年に創設された成城小学校に遡ります。1926年に7年生高等学校である旧制成城高等学校が、1927年には5年制の成城高等女学校が設立され、戦後にこの2つが母体となって1950年、成城大学が開設されました。当初は経済学部と理学部が設置されていましたがその後いくつかの改編を経て現在に至ります。
建学の精神は「人生は真善美を理想とすると言われるが、学校は真理行われ道徳が通りまた美的の所でありたい」[i]です。創設者は真理と道徳を重視し、表裏のなさと気高さを持ちかつ柔和な学生の育成を目指していました。そして人それぞれの個性を尊重する教育や心情の教育など四綱領を定め、学生には自学自習・自治自律を求めました。
現在の大学のミッション・ビジョンは「グローバル社会を生き抜く『独立独行』の人を育成する」[ii]です。この下で、優れた識見と人格の涵養や自ら考え行動する力の養成などを目標に掲げています。
成城大学グローカル研究センターでは世界でもユニークな「グローカル研究」を構想し文部科学省からも「研究拠点を形成する研究」などの指定を受けています。
2016年にはこの分野での全学的研究が「私立大学研究ブランディング事業」に選定され国内外の大学・研究機関と連携・協力を進めており、世界的な研究ネットワークを構築しています。また地域連携を大学の教育基盤の一つとしており、所在する世田谷区や近隣を走る小田急電鉄との連携・協力関係を強め地域に貢献しています。
成城大学は歴史ある大学とだけあり著名な卒業生を数多く輩出しました。政治家の羽田孜さんや小渕優子さん、直木賞作家の荻原浩さんや芥川賞作家の辻仁成さん、他にも大企業の社長や多数の芸能人・アナウンサーがここ成城大学を卒業し活躍しています。
また社長や有名人の子どもも多く、「セレブ」というイメージはここから来ているのでしょう。
学生総数は5698人で、女子の方が男子よりも多いのが特徴です。文系の総合大学として4学部11学科が設置されていますが、中でも社会イノベーション学部は全国でも珍しい「イノベーション」に着目した学部となっており人気の高い学部です。
成城学園の幼稚園から大学院まで併設されている成城のキャンパスでは少人数制授業と特徴的な授業で学生の主体的な学びを引き出しています。
設置されている学部は経済学部、文芸学部、法学部、社会イノベーション学部の4つです。開学当初は理学部と経済学科がありましたが理学部は1954年に廃止され、現在は人文社会科学系の総合大学として研究・教育を行っています。各学部に置かれている学科は以下の通りです。
経済学部:経済学科、経営学科
文芸学部:国文学科、英文学科、芸術学科、文化史学科、マスコミュニケーション学科、ヨーロッパ文化学科
法学部:法律学科
社会イノベーション学部:政策イノベーション学科、心理社会学科
平成31年度の入学者数は1257人です。定員の1215人よりはやや多い数字ですが、国の定員厳格化の影響か過去2年と比べ減少傾向にあります。各学部・学科の内訳は以下の通りです。
経済学部:360人(経済学科180人、経営学科180人)
文芸学科:375人(国文学科60人、英文学科75人、芸術学科60人、文化史学科60人、マスコミュニケーション60人、ヨーロッパ文化学科60人)
法学部:240人
社会イノベーション学部:240人(政策イノベーション学科120人、心理社会学科120人)
キャンパスは小田急線の成城学園前駅から徒歩4分の所にあります。この成城キャンパスのワンキャンパスであり、新宿駅や渋谷駅から最寄り駅まで15分というアクセスの良さも特徴です。
駅前には商店街がありますが、駅から少し離れれば住宅街が広がっているため静かで落ち着いた雰囲気が流れています。この成城キャンパスには成城学園の成城幼稚園、成城学園初等学校(小学校)、成城学園中学校高等学校、成城大学があり、そのうち3分の1ほどが大学の敷地です。
大学のキャンパスとしてはそこまで大きくはなく、校舎間の移動は楽だそうです。グラウンドや体育館も成城キャンパス内にあります。清潔感のある白色の校舎が特徴的です。
この項では学科について詳しく記していきます。
経済学部[iii]:2年次から始まり3年間必修となるゼミナールと、実践的な英語力を身に付けることでグローバル人材を育成することが特徴です。また学科の枠を超えて経済と経営を学ぶことができます。
文芸学部[iv]:幅広いジャンルの教員から学べる学部共通の文芸講座、そして「書く・読む・議論する」力を伸ばし自発的な研究・表現を育成する「WRD」というプログラムが特徴です。
法学部[v]:1年次から始まる少人数制での演習授業と、キャリア形成支援の一環として各界で活躍している卒業生の話を聞く「現代社会と法」の授業、そして3年次からのコース制授業が特徴です。
社会イノベーション学部[vii]:AIなどのイノベーションの可能性や課題、影響について考察し議論する「社会イノベーション特殊演習」の授業と2年次から始まるゼミナール、そして実際の場面で使える英語力を鍛える教育が特徴です。
授業の特徴としてはアクティブラーニングと課題解決型学習(PBL)、少人数教育が挙げられます。
アクティブラーニングについては、ゼミナールや演習などプレゼンテーションやディスカッション、グループワークを取り入れた授業が多く学生の主体的な学びを促進しています。PBLの特徴的な科目としては全学共通教育科目の「プロジェクト科目」があり、企業に成城大生発の商品を提案したりしています。
最後の少人数教育は特にゼミナールで見られる特徴です。ゼミナールは全学部で必修であり、必ず何らかの成果発表を行うことが求められています。語学などでも1クラス10~20人程度で授業が行われています。
取得可能な資格は学部によっても異なりますが、中学校・高等学校の教員免許や学芸員、社会調査士の資格を取得することができます。また法学部法職課程では法律基本科目初級講座を開設しており、法科大学院の入学試験や司法書士・行政書士試験、各種公務員試験を受験する学生を支援しています。
2019年で第65回を迎える「成城祭」は11月の上旬に行われます。同じ敷地内にある幼稚園~大学まで同時に開催されるため大変盛り上がり(2日間で3万人が訪れるそうです!)、また近隣の商店街からいくつかの店が出店するなど地域密着型のアットホームな学園祭になっています。
講演会には毎年有名人を招待しており、2018年は千葉雄大さん、2019年は賀来賢人さんがトークショーを行っています。その他にもお笑いライブなどを開催する「本部企画」や「ミュージックフェスティバル」などのイベント、大学生のアイドルグループ「UNIDOL」として様々なイベントに出演し大会でも好成績を残しているグループ「成城彼女」の公演、イルミネーションの点灯式などが見所です。
この他にも、行事は学習院大学・成蹊大学・武蔵大学との対抗で行われる「四大学運動競技大会」や「伊勢原スポーツデイ」、「成城レガッタ」があります。
「伊勢原スポーツデイ」は毎年5月に伊勢原総合グラウンドで行われるスポーツイベントで、300~400人の学生が参加します。
「成城レガッタ」は戸田のボートコースで行われるボートレースで、有志の5人でチームを組んで参加できます。いずれも学生のスポーツ振興や交流の面で大きな役割を果たしていると言えるでしょう。
授業も学生の主体的な学びを促すような面白いものが多くあります。経済学部経済学科の「開発経済学」では途上国の貧困問題や国内の災害復興問題をテーマに統計分析など社会で不可欠なスキルを学びます。
また経営学部の「経営史 日本の産業及び企業の発展経路」では三井などの商家が財閥になった経緯や現在の様々な産業が現在の形になった歴史を学びます。
その他にもディズニーとその多国籍複合企業群から世界での英語文化の様々な問題を考える英文学科の「ディズニーを理解する」、国際社会における国連や世銀といった国際組織の目的や任務、構造、活動などを学ぶ法学科の「国際組織法」などがあります。
大学を飛び出して実際に体験するものもあり、現地調査を伴う文化史学科「文化史実習」は必修科目で、例えば沖縄で「海人」の社会と文化を学んだりします。
更にマスコミュニケーション学科の「マスコミ基礎演習 都市の現在、都市の歴史」ではオリンピックやディズニーランドなどの文献を読みつつ、ある地域の歴史について実際に足を運びながら調査し、東京の歴史と現在を考えます。
成城大学は成蹊大学、明治学院大学とともに「成成明学」と言われるグルーピングをされることがあります。
いくつかの入試方式が用意されており、方式や学部によっては10倍近い倍率・「GMARCH」レベルの高い偏差値となっています。十分な調査、対策の下で臨みましょう。
入試方式は一般入試、AO入試があり、その他にも指定校推薦などで入学することができます。
一般入試には全学部統一入試であるS方式、学部別入試であるA方式、センター試験利用入試であるB方式の前期日程・後期日程があります。後期日程の対象学部は法学部と社会イノベーション学部のみです。
またAO入試は全学部で実施されていますが、文学部は英文学科、マスコミュニケーション学科、ヨーロッパ文化学科の3学科のみ行われています。
S方式一般入試は成城キャンパス以外に札幌、さいたま、千葉、横浜、長野、静岡、福岡に試験会場が設けられています。
一般入試S方式の試験日は2/2です。受験科目は国語と英語のマークシート式(統一問題)で、学科ごとに配点が異なります。募集人数は各学科10人程度とあまり多くはありません。
一般入試A方式は学部ごとに試験日・試験問題が異なり、2/4~2/7に行われます。経済学部と法学部は国語、外国語と選択科目の3教科の受験が必須です。一方で文芸学部と社会イノベーション学部は2教科型試験と3教科型試験が用意されています(同一学科で2教科型と3教科型の併願が可能です)。また複数学部に出願することもできます。この方式が最も募集人数が多くなっています。
センター試験利用入試のB方式は前期・後期とも個別試験がありません。学科ごとに設定されている中から3教科、ないしは4教科を選択しその点数で判定されます。後期日程は2月中旬に出願できるので自分のセンター試験の得点を参考にして受験することが可能です。
AO試験は一次試験が9月~10月上旬に、二次試験が11月上旬に行われます。詳細な内容は以下の通りです。倍率は5倍~7倍ほどとなっています。
表1 AO試験
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記のうえで許可)
人気が高いのは社会イノベーション学部などで、偏差値は社会イノベーション学部や経済学部経済学科で高くなっています。
偏差値で比較すれば学部によっては「GMARCH」や「関関同立」にも劣らぬ難易度と言えるでしょう。
センター試験利用入試(B方式)でも得点率は80%前後が必要で、85%になる学科もあります。大学の入試情報サイトには「傾向と対策」のページがあるので、受験される方はご覧になってはいかがでしょうか。
初年度納入費は130万円前後です。授業料や入学金、施設費などは全学部・学科で統一となっています。諸会費(父母の会費・学友会費等)が学部によって一部異なるので初年度納入費にも1万円程度の差が出ています。
表2 学部の学費
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記のうえで許可)
奨学金は経済的理由で修学が困難な在学生を対象とした大学独自の給付奨学金が用意されています。種別は以下の3種類です。
この他にも日本学生支援機構の貸与型奨学金を受け取ることもできます。
また、特待生制度(成城大学澤柳奨学金)があります。
1年次には入試成績上位合格者に対して授業料相当額、もしくは半額相当額が支給されます。採用人数は108人ずつです。2~4年次は人物・学業ともに優秀な者に対して授業料相当額もしくは半額相当額が支給されます。採用人数は全額が12名、半額が60名です。
学生寮「アミスタ南烏山」は大学まで自転車かバスで15分の場所にあります。新宿や渋谷にも最寄り駅から20分以内で行けるアクセスの良さだけでなく食事が朝晩出るのも特徴です。
個室、3人部屋、4人部屋の3種類があり、賃貸料、食費、共益費など合わせて月額12万円必要です。また成城大学の交換留学生の寮であり国際交流もできます。
学生寮の他に、成城大生限定マンション「エスポワール成城」があります。成城大学まで徒歩10分、祖師ヶ谷大蔵駅まで徒歩8分の閑静な住宅街の中にあり、駅前には商店街もあるので買い物にも便利です。賃料は6万円ほどで、1階は男性限定、2階は女性限定のフロアとなっています。また、厚生部による下宿紹介もあるので初めての1人暮らしの方も安心できるでしょう。
2019年卒業生の就職率は97%という数字を記録しています。成城大学では就職活動のテクニックを教えるのではなく、学生が将来像をイメージし主体的にキャリア形成に取り組むことを推奨しています。そのためキャリア支援もきめ細かいながらも学生の成長を支えるという形をとっています。
学部ごとの卒業生の就業先を見ていくと、経済学部からは金融業や卸売り・小売業、文芸学部からはマスコミ・教育・サービス業や卸売り・小売業、法学部からは金融業や公務、社会イノベーション学部からは建設・不動産・運輸・通信・エネルギー業、製造業が多くなっています。
高い就職率の背景には大学全体での支援体制があります。授業内でも行われる就業力育成・認定プログラムを展開し、キャリア形成を段階的に支援する「キャリア教育」、キャリアサポートプログラムの澤柳塾やインターンシップ・プログラム、資格取得支援を行い社会で活躍する力を育む「キャリア支援」、さまざまなガイダンス、セミナーやキャリアカウンセラーによる個別相談など学生個々の状況に合わせたサポートを行う「就職活動支援」、この3つを柱にして学生のキャリア形成をサポートしているのが特徴です。
進学者はそれほど多くはありませんが、平成30年度卒業者からは文芸学部から19名、全体では37名が大学院や専門学校等に進んでいます。
大学院には経済学研究科、文学研究科、法学研究科、社会イノベーション研究科が置かれています。各研究科に設置されている専攻科目は以下の通りです。
経済学研究科:経済学専攻(経済理論、応用経済、経済史、社会政策)、経営学専攻(経営学、商学、会計学、情報・ファイナンス)
文学研究科:国文学専攻、英文学専攻、日本常民文化専攻、美学・美術史専攻、コミュニケーション学専攻、ヨーロッパ文化専攻
法学研究科:法律学専攻
社会イノベーション研究科:社会イノベーション専攻(経済政策領域、経営戦略領域、心理領域、社会領域)
この他に、研究機関として民俗学研究所、経済研究所、グローカル研究センターの3つが設置されています。
成城大学というと「お金持ち・セレブ」のイメージがあるかもしれません。
ただ、全員がそうという訳ではなく他の大学と同じように色々な学生が集まっています。学費も他の大学と比べて特別高いということもありません。
学生の雰囲気としては落ち着いた人が多く人間関係で問題が起きるようなことは少ないとの声がありました。
キャンパスの大きさも含め、大学の規模がそれほど大きくないことも特徴です。これにはもちろん長所も短所もあります。長所としては移動が楽なこと、ワンキャンパスでもあり他学部・他学科の人とも交流がしやすいこと、サークルや部活動も同じ場所で行われること、教育・就職支援の点で学生一人ひとりに対して目が行き届いたサポートができることなどです。一方の短所としては人脈が他の大学と比べてあまり広がらないことなどが挙げられます。
大学の設備はかなり整っていると言えるでしょう。机にコンセントが設置されている教室などもあり、またほとんどの建物にパソコンが置かれているためレポートの執筆などの際には利用することができます。古い校舎もありますがトイレは綺麗で食堂も最近リニューアルされました。カフェのようなオシャレなラウンジもありグループワークをする際に使うこともできます。図書館では色々な映画を空きコマなどに観ることができ、学内のスポーツジムを利用できるのも魅力の一つでしょう。
成城大学では6割の学生が部活動に所属していると言われるほど部活に力を入れており、サークル活動よりも盛んに行われています。
部活動は大学公認の活動になるため、施設を優先的に使えることや大学からの予算が出ること、部室の使用が可能であることなどの利点があります。もちろんサークル活動も数はそこまで多くないながらも活発に行われており、サークル内で友人を作ったり恋愛をしたりする学生もいます。また、他大のインカレサークルに入る学生も多いようです。
成城学園駅前のお店はやや高い店が多いですが、近くの下北沢駅にはカフェや古着屋など色々な店が揃っているので空きコマや放課後には下北沢や新宿で遊ぶ学生が多くなっています。
[ii] 同上
[vi] 成城大学法学部HP 「受験生 法学部で何をどう学ぶか カリキュラムの基本理念」
[vii] 成城ブリッジ 「学部・学科 社会イノベーション学部」
(以上11/10閲覧)