モダニズムの芸術を知る。Part1.モダニズムって何?/ダダイズムとは?

その他

はじめに

みなさんは、20世紀の芸術というと何を思い浮かべるでしょうか?

ピカソのキュビスム絵画や、ダリやマグリットのシュルレアリスム絵画、デュシャンのオブジェなど思い浮かべる人が多いでしょうか。抽象絵画では、モンドリアンやポロックの作品はみなさんにもイメージしやすいかもしれません。

ここでは、1910年代に起こったダダイズムや、形而上絵画、その後のシュルレアリスムについてその思想や背景がわかるようにまとめてみました。

美術と聞くと敷居が高いと感じる人もいるかと思いますが、美術史は歴史の領域の学問です。芸術家の活動や思想は社会の状況と密接に関係しているので、美術史を学ぶことは世界史を普段と別の角度から考えることにもつながると思います。

それでは見ていきましょう!Part1では、「モダニズムとは?」「ダダイズムとは?」の二つを解説します。Part2では、シュルレアリスムと、それに影響を与えた画家、ジョルジョ・デ・キリコについて解説します。

コラムでは20世紀絵画の見方についての見解を簡約しました。みなさんそれぞれの芸術の楽しみ方を考えるきっかけとなれば幸いです。

Part1. モダニズムって何?/ダダイズムとは?

モダニズムとは何か?

モダニズムとは「新しさに傾倒し、それまでに築き上げられてきた芸術の常識を打ち破るような前衛的な運動や作品を、現代の感覚にマッチした表現にしようとする態度」を指します。“態度”を表す言葉なので、その時期についての定義は研究者によって異なりますが、一般に美術史においては、19世紀後半から20世紀初めにかけて用いられます。その分野は、絵画のみならず、建築、文学など多岐にわたり、たくさんの芸術家が似た思想を持つ者同士で集まり、「~派」「~主義」といったグループで運動を推し進めたこともモダニズムの大きな特徴です。

とりわけ印象主義以降、点・線・面・色彩・明暗といった絵画における基本的なエレメントの関係性を再考し、新たな画面の構図を実践したことから、近代絵画の父とよばれるセザンヌの登場や、1907年のピカソによるキュビスム絵画《アヴィニョンの娘たち》の発表は、来る20世紀という芸術の新たなステージの幕開けを告げる出来事でした。その後も20世紀前半はフォーヴィズム、立体派、ダダ、未来派、シュルレアリスム、ドイツ表現主義といった「モダニストたちによる時代であり、彼らは急進的な科学技術の進歩、幾度にも渡る戦争といった様々な社会状況を背景に、それまでにない芸術の在り方や、時代の変化に対応した芸術を目指したのです。

ダダイズムとは?

ダダは第一次世界大戦期に成立したとされていますが、戦前から、既成概念に対抗して、新しい素材と技法を導入し、当時のモダンな生活の急速に変化する諸条件を反映した様々なテーマを描き出す活動は盛んにおこなわれていました。こうした運動はヨーロッパの諸都市で見られましたが、ダダは印象派やフォーヴィズム、立体派などの運動により独自の地位をすでに得ていたパリを中心とする運動でした。

19世紀後半のフランスではルネサンス以来の古典的でアカデミックな伝統が重視されており、前衛芸術はしばしば既成支配層との対立、とりわけ中産階級との衝突をもたらしました。一方で、アポリネールのような芸術の刷新に力を貸す人物もおり、様々な雑誌、展覧会により、前衛芸術家の活動は世界中へ広がっていきました。こうした国際的な前衛芸術の急激な広がりは、政治思想や哲学思想の革命、急速な都市化や科学技術の発展と時を同じくしており、当時の芸術家に大いに影響を及ぼしました

ダダ成立の大きな契機となった出来事は、バルカン戦争、それに続く第一次世界大戦です。これらの戦争は先例を見ないほどの人的犠牲を残しました。フランスの保守勢力は、あらゆる要素において国際的であった前衛芸術を攻撃し、愛国主義を掲げましたが、戦争に出向いた芸術家たちはそうしたナショナリズムへの嫌悪感や、既成概念への疑問を抱きました。そして、ダダにおいてその表現の試みがなされることになったのです。

〔マルセル=デュシャン《泉》〕

ダダイズムは、当時、戦争を逃れた知識人たちの受け皿となっていた中立国スイスのチューリヒにある居酒屋キャバレー・ヴォルテールでの前衛的かつ実験的なパフォーマンスによる混沌とした空間から始まったとされていますが、それ以降パリ、ニューヨーク、ベルリンなど世界中の都市で同時多発的に運動が行われるようになりました。現在では、ダダの代名詞となっているマルセル・デュシャンがニューヨークで制作したレディ・メイド作品《泉》はまさに、古い芸術観の破壊、強烈な革命性にみられる、ダダイズムの反芸術性を最も強烈に世界に提示した例なのです。

コラム

20世紀の抽象画、どう見る?

みなさんの中に、「正直、20世紀の芸術はよくわからないな…」と感じる人はいないでしょうか。私の周りでも「現代美術館に行ったけど、どの部屋もよくわからなかった」と言って帰ってきた人がいました。たしかに、全部を理解しようとするのは難しいですよね。ましてや、普段から美術作品を見慣れていない人が見たら全く意味が分からないかもしれません。

もちろん芸術作品は他の時代・作者・作品などとの比較を通して語られることが多く、それだけ見てもよくわからない、ということはあると思います。

しかし、この「よくわからない」という感覚の別の原因として、20世紀から絵画の抽象化が急速になったことがあると思われます。19世紀末から20世紀前半の芸術家は、それまでの伝統的な絵画の在り方を否定し、もう一度絵画とは何か」「芸術とは何かを徹底的に考え直そうとしました。その結果、科学の進歩や戦争を背景に、社会全体に漂っていた物質主義・合理主義的な姿勢を批判する彼らは、心や感情といった精神的な目に見えない部分の表出に芸術の主眼を置くようになり、それに呼応して、表現の在り方も従来の具象的なものから抽象的なものになっていったのです。その激しい造形表現や色彩表現に彼らの感情や考え方といった内面を見て取ろうと試みたとき、私たちの絵画体験はより深いものとなるのではないでしょうか。

                         → Part2 へ続く

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