2015年に放送された『あさが来た』という朝ドラをご存知でしょうか。このドラマで主人公・あさ(波留さんが演じていました)が創設した「日の出女子大学校」こそ日本女子大学がモデルになっている大学校です。実業家の広岡浅子を中心に1901年に創設された、日本で最初の組織的な女子高等教育機関であるこの大学は女子教育の先駆けともいえる存在です。日本でも有数の女子大学として、近年は高い就職率などが象徴する面倒見の良さも魅力になっています。この記事では、そんな日本女子大学について書いていこうと思います。
広岡浅子とともに創設に貢献した成瀬仁蔵の下、古くから男女共同参画社会の実現に取り組むなど日本女子大学は女子教育のモデルとなるような先進性を持っていました。そして7万人もの卒業生の中には政治や芸術など幅広い分野で活躍する人もいます。
創設者・初代校長として知られているのは教育者の成瀬仁蔵です。(ちなみにドラマ『あさが来た』では瀬戸康史さんが演じていました。)
1896年に女子高等教育機関の設立を意図して『女子教育』を出版し世論を喚起しました。そして1901年に目白に日本女子大学校が開校され、1948年に学制改革により新制大学日本女子大学が発足し家政学部と文学部が設置されました。1990に西生田にもキャンパスが置かれましたが、2021年に廃止される予定です。
創設者の成瀬仁蔵は人格教育を基本とした女子高等教育のモデル校としました。『女子教育』にも記された「女子を人として教育すること 女子を婦人として教育すること 女子を国民として教育すること」が建学の精神であり、また教育理念として三綱領「信念徹底・自発創成・共同奉仕」を掲げています。
そしてこれらの伝統は守りつつ、時代の変化や多様な価値観に対応できるフレキシブルな感性を育成することを目的とし、「男女共同参画社会」の本当に意味での実現を使命ととらえています。
旧制の日本女子大学校時代から、特に社会福祉や報道の分野に数多くの人材を輩出してきました。主な出身者には平塚らいてうや作家・脚本家の橋田壽賀子、日本初の女性国会議員である高良とみや近藤鶴代、映画監督でアカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞も受賞した伊比恵子、「うる星やつら」などでも知られる漫画家の高橋留美子などがいます。また高村光太郎の妻で「智恵子抄」でも知られる洋画家の高村智恵子もここの卒業生です。
日本有数の歴史ある女子大学として様々な取り組みを行ってきましたが、中でも男女共同参画活動は時代に先駆けて行ってきました。昨今では現代女性キャリア研究所を設置し女性の持てる能力を発揮できる社会実現に貢献することを目指しています。
またリカレント教育課程(就職語、育児や進路変更などで離職した女性に1年間のキャリア教育を通し技術や知識、また働く自身や責任感を育み再就職を支援するプラン)を実施し女性の充実したキャリアを支援しています。
現在、日本女子大学には4学部15学科が設置されています。目白と西生田2つのキャンパスでは理論と実践の両方を伸ばすような授業が行われており、学生は将来社会に出ても役に立つようなスキルを伸ばすとともに幅広い教養を身につけています。
学部は家政学部、文学部、人間社会学部、理学部の4つが置かれています。各学部に設置されている学科は以下の通りです。
学科ごとの入学定員は以下の通りです。
表1 入学定員
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)
キャンパスは目白と西生田の2か所にあります。
目白キャンパスはJR山手線の目白駅から徒歩15分(もしくはバスで5分)、東京メトロ副都心線の雑司が谷駅から徒歩8分、有楽町線護国寺駅から徒歩10分です。
ほとんどの学部がこのキャンパスを利用しており、教室や実験室、図書館や学生食堂などの他体育館や1906年に建設された成瀬記念講堂などがあります。図書館など新しい建物も多く、開放的でおしゃれな雰囲気のようです。
目白駅の周辺にはレストランやカフェなどが多く、また池袋にも歩いていくことができるので便利で環境はいいと言えるでしょう。
もう一つの西生田キャンパスは小田急線のよみうりランド駅から徒歩15分、向ヶ丘遊園駅からスクールバスで15~10分です。よみうりランド駅からは山道になっているため通学は少し大変かもしれません。
現在は人間社会学部の学生が通っていますが2021年に目白キャンパスに移転される予定です。教室や図書館の他、グラウンドやテニスコートがあり非常に自然豊かなキャンパスとなっています。
食事は食堂で済ませる学生が多く、遊びや買い物には近隣の新百合ヶ丘に行く学生が多いようです。
この章では各学科・専攻について詳しく見ていきます。
家政学部
文学部
人間社会学部:現在は西生田キャンパスで授業が行われていますが、2021年に目白キャンパスに移転予定です。
理学部
日本女子大学での教育の特徴は「一人ひとりの個性を尊重する少人数教育」「学びの集大成である卒業論文・卒業研究」「学生の好奇心や向上心を満たすカリキュラム」「自分の進む道を探求する教養特別講義」「世界をフィールドにして活躍するためのグローバル人材育成」「f-Campus制度による他大学との交流」の6つです。これらについては8章で詳しく説明します。
取得できる資格は以下の表の通りです。少人数教育の特徴を活かしてきめ細やかな就職支援を行っており、その一環として資格の取得も充実しています。学科で教わる専門的な知識とともに、この資格によりキャリアの可能性は広がることでしょう。
表2 取得可能な資格
(日本女子大学HP より)
大学の行事として最大のものは学園祭です。目白・西生田のキャンパスごとに学園祭実行委員会が組織され、10月半ばの2日間開催されています。
「目白祭」は10月の半ばに2日間行われます。2019年で第66回を迎える伝統ある学園祭です。主な企画としては、お弁当作りやファッションショー、スピーチ発表などで魅力を伝えグランプリを決めるミスコンテストやアーティストの野外ステージ企画、チョコレートプラネットなどの人気芸人によるお笑いライブ、俳優などを招いたトークショーがあります。その他にもサークルや学科、ゼミ、研究室による発表・パフォーマンス、有志団体などによる模擬店が催されます。
西生田キャンパスで行われる学祭は「日女祭(ひめのさい)」です。こちらでも俳優・声優を招いたトークショーやサークル、実行委員などによる様々な企画が催されます。
続いて、いくつかの特徴的な授業について書いていきます。先ほども述べたように少人数教育が特徴の一つであり、きめ細かい指導の下で社会に出てからも役立つような理論・実践の双方を伸ばすような授業が多く展開されています。
入試制度は、基本的には一般入試と推薦入試の2種類があります。学部・学科によって科目や選抜方法などは異なるので詳しいチェックが必要です。家政学部など人気の高い学科も多く、十分な対策をすることをお勧めします。
入試方式は一般入試(英語外部試験利用型一般入試、センター試験利用入試も含む)の他自己推薦入試などがあります。
一般入試は全学部・学科で実施されますが、自己推薦入試は家政学部の食物学科・住居学科、人間社会学部の現代社会学科・教育学科・心理学科を除く学科での実施です。
センター試験利用入試は個別学力試験を実施せず、前期募集・後期募集の2通りがあります。(後期募集は家政学部の児童学科・食物学科では行われません。)
一般入試と英語外部試験利用型一般入試は目白キャンパスにて、2/1~2/3に行われます。
一般入試では2科目、ないしは3科目を受験します。選択科目は学科によって異なりますが、全ての学科で外国語の受験は必須です。英語外部試験利用型では、外部試験のスコアが基準を超えている場合に外国語以外の科目で受験ができます。
センター試験利用入試の前期募集はセンター試験3教科3~4科目(家政学部食物学科、理学部数物学科のみ4~5科目)の点数で選抜されます。また後期募集では2~3教科2~4科目の得点により選抜されます。1/17までに出願しなければならない前期募集と異なり、後期募集ではセンター試験後の2月に出願が出来るのが特徴です。ただし募集人数は少なく合格のためには高得点が必要でしょう。
自己推薦入試は学科によって選抜方式が異なります。多くの学科は調査書や志望理由書などの書類を提出しその後11月下旬に学力考査や小論文、面接の試験を受けます。ただし、書類審査が1次選考になっている学科やその際に小論文の課題を課している学科、英検など外国語試験での成績が必要な学科もあります。
学科ごとに偏差値を見ると、最も高いのは家政学部の住居学科や食物学科となっており、学習院大学や成城大学、東京家政大学などと同じくらいの難易度と言えるでしょう。
センター試験利用型(前期)の得点率はおおよそ80%前後で、一般入試の合格最低点は60%~75%程度となっています。
また、推薦入試の倍率(2019年度入試)は高くても3倍程度とそこまで高くありませんが、今後「現役志向」が高くなっていけば倍率も上がっていくかもしれません。
学科ごとの学費は以下の通りです。2年次からは保険料がかからない(初年度に4年分納入)他、泉会会費が年額18,000円となるため年間およそ100万円~120万円ほどとなります。
表3 学科ごとの学費
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明記の上で許可)
奨学金については、いくつかの制度があります。その中で大学独自のものをいくつか挙げていきます。
学寮は、2021年度のキャンパス統合を前に2020年の4月から新しくなる予定です。従来の潜心寮と泉山寮(いずれも目白キャンパス敷地内)がリノベーションされ、恵まれた環境で暮らすことができるでしょう。
新しい寮の特徴としては食事付きであること、全室個室で机やベッドといった家具がついていること、談話室があり他の寮生とコミュニケーションがとれることなどが挙げられます。
また談話室にはキッチンも付いているため自炊をすることも可能です。キャンパス内にあるため通学に便利で、また都心にありながらも緑の多い環境で暮らすことができるでしょう。寮費は光熱費等も含め年額約100万円で、食費として約10万円必要です。
寮は自治寮となっているため学生自らがルールを定めて運営していきます。入寮式やオリエンテーションなどの行事もあり、共同生活を通じ協調性なども身に付くことでしょう。
2019年度卒業生の就職率は99.0%と高い数字になっています。多くの学科の学生が就職を希望していますが、住居学科の建築デザイン専攻や心理学科、理学部など大学院に進学して研究を続ける学生が多い学科もあります。
学科ごとの就職状況を見てみると、児童学科や食物学科、英文学科、教育学科など多くの学科で就職率が100%となっており、その他でも90%を超えています。
就職先としては、金融・保険業(家政経済学科や文学部、現代社会学科、社会福祉学科が中心)やサービス業(食物学科管理栄養士専攻や英文学科、心理学科や物質生物科学科)、情報通信業(家政経済学科や理学部)の割合が高くなっています。また児童学科や教育学科から教育・学習支援業、住居学科から建設業、被服学科から卸売・小売業に進む学生が特に多いのも特徴です。職種を見てみると事務職や総合職に就く卒業生が多いというのも特徴的と言えます。
上でも述べたように、理学部など一部の学科では大学院に進学する学生も多くなっています。(例えば理学部からは約15%が、また建築デザイン専攻からは約35%、心理学科からは25%が進学しています。)
また、進学先は日本女子大学大学院の他早稲田大学大学院、東京大学大学院などです。
大学院には家政学研究科、文学研究科、人間社会研究科、理学研究科、人間生活学研究科の5つの研究科が置かれています。各研究科に設置されている専攻は以下の通りです。
最後の章となるこの章では、この大学での生活やメリットについて書いていきます。
まず、第3章で記した教育の特徴についてです。「少人数教育」は特に全学科で実施されるゼミ授業で見られます。文献資料の探し方やレポートの書き方、発表におけるコミュニケーション能力などを学び、これらの技術が4年次の卒業研究で集大成として発揮されるのです。その「卒業論文・卒業研究」は全学科で必修となっています。
続いて「カリキュラムの特徴」ですが、日本女子大学は女子の総合大学として人文科学・社会科学・自然科学・生活科学の分野について学部を横断して授業を履修することができます。
更に資格関係科目やキャリア形成科目なども用意されており学生の向上心を満たすようなカリキュラムが組まれています。「教養特別講義」は1年次の必修科目「教養特別講義1」と2・3年次の「教養特別講義2」があり、2では社会の第一線で活躍する人の講演やディスカッションを通し学生の社会貢献意識を高めています。
「グローバル人材育成」は通常の外国語授業だけではありません。気軽にネイティブスピーカーと話したり語学学習などのアドバイスをもらえたりするランゲージ・ラウンジや充実した留学制度など、国際的に活躍できる女性となるための仕組みが整っています。
最後に「f-Campus」とは近隣の学習院大学、学習院女子大学、立教大学、早稲田大学との単位互換制度のことです。他大学へ授業を受けに行ったり、また他大生が講義を受けに来たりすることで人間関係の幅を広げることができます。
大学の雰囲気はアットホームと言えそうです。語学など人数の少ない必修科目では顔を合わせる機会も多くなるためクラスメイトとの仲は自然と良くなります。
学生はいい人で落ちついた雰囲気の人が多いようで、一般的な女子大生に抱くようなイメージとは違うかもしれません。女子大ということで恋愛のことも気になるかもしれませんが、東大や早稲田大学とのインカレサークルも多く、サークルやバイト先で彼氏を作るような人が多いそうです。
大学の公認サークルは約70もあります。バスケットボール部やバレーボール部など「定番」のものやフィギュアスケート部といった珍しい運動部、合唱団などの音楽サークル、華道部や映画研究会などの芸術サークル、更には児童文学研究会や手話サークル、レゴサークルといったものまであります。
最後に、就職率の高さも大きなメリットと言えるでしょう。その理由としては伝統校としてのブランド力、上でも述べた実践力を伸ばす授業、そしてきめ細かいキャリア支援体制があると思われます。キャリア支援プログラムにはキャリア支援課によるガイダンスや説明会、相談会、マナー講座などがあります。また教員や公務員など専門分野を目指す学生のために試験対策講座なども行われています。
さらに、卒業生のバックアップ体制はこの大学ならではのものでしょう。今まで7万人もの卒業生がおり、学科を越えて全国に卒業生のネットワークが存在します。卒業生との懇談会やガイダンスがあり、就職に関する膨大なデータを利用できることは大きな利点です。色々な面で、非常に「面倒見の良い大学」であるとの声が多くありました。
参照文献
日本女子大学HP 「学部・大学院 家政学部 児童学科」
同上 「学部・大学院 家政学部 食物学科(食物学専攻)」
同上 「学部・大学院 家政学部 食物学科(管理栄養士専攻)」
同上 「学部・大学院 家政学部 住居学科(居住環境デザイン専攻)」
同上 「学部・大学院 家政学部 住居学科(建築デザイン学科)」
同上 「学部・大学院 家政学部 被服学科」
同上 「学部・大学院 家政学部 家政経済学科」
同上 「学部・大学院 文学部 日本文学科」
同上 「学部・大学院 文学部 英文学科」
同上 「学部・大学院 文学部 史学科」
同上 「学部・大学院 人間社会学部 現代社会学科」
同上 「学部・大学院 人間社会学部 社会福祉学科」
同上 「学部・大学院 人間社会学部 教育学科」
同上 「学部・大学院 人間社会学部 心理学科」
同上 「学部・大学院 人間社会学部 文化学科」
同上 「学部・大学院 理学部 数物科学科」
同上 「学部・大学院 理学部 物質生物科学科」