理系の受験生の方で、理科の物理・化学・生物から二教科を選択する際に,生物を選択することを躊躇する人は多いのではないでしょうか。
それは、
という教科の特性があるからです。
出題する大学側にとっても、生物は標準レベルの出題にしてしまうとなかなか差が生じにくく、深い理解と知識が定着しているかどうかもはかれず、どうしても生物の出題レベルを上げざるを得ないのです。
それに,生物は範囲が広く各章でおさえるべき知識も膨大ですから、ここまでやればほぼ大丈夫、という基準はないようなものです。
掘り下げれば掘り下げる程良い、という事になりますし、中には大学レベルの事象まで理解しておかなければ解答できないような問題でさえ出題されます。
しかし、医学部や農学部、生命科学部、看護学部等のなかには、理科は生物のみ、または生物と化学の二科選択が必須となっている学部も多くあります。
それは、これらの学部に進めば生物をより広く深く学ぶことになるからです。
そこで、
「生物選択は避けられなけど、一体どうやって勉強すれば良いの?」
と途方に暮れている人に、生物の効率の良い勉強方法をお話ししたいと思います。
まず大前提として、あくまで生物は理系科目ですので、文系科目と同じような『単純暗記』をすればそこそこいける、という考え方はやめましょう。
用語だけ暗記しても、その章の事象を縦にきちんと理解していなければ生物の問題には正しく解答する事は出来ません。
そこで、やはりまずは生物の教科書に沿って知識を取りこぼさないよう学習を進めて行くのが良いと思いますが,その際には新たに登場してくる事象に対して
『興味を持つ』
ことを心がけましょう。
そして、その興味を持った事を
『より良く知る』
努力をしてみて下さい。
例えば自分が好きな芸能人が居たとしたら、自然に「出身はどこかな?」「誕生日はいつかな?」「どこに住んでいるのかな?」「血液型は何かな?」「何が好きなのかな?」等と限りなく興味が湧いてきて、もっとその人の事を知りたい、と思うはずです。
そんな時に、「でも調べるのは面倒臭いからいいや。」とか、「一度調べたけど忘れちゃったから書いて暗記しなくちゃ。」となることはまずないでしょう。
一度調べたら、その情報は二度と忘れないですよね。
つまり、興味を持てばそれにまつわる事を頭に焼き付けることは簡単な訳で、それならば生物に関しても同じようにすれば,大学受験で十分通用するだけの知識を蓄積して行くことは可能になるはずです。
まして、もし生物選択が避けられない学部に進む予定なのでしたら、逆に苦痛に思わないぐらい生物に興味を持っている人でないと、入学してからの授業や研究活動も苦労してしまうでしょうし、なかなか進級出来ないかもしれないどころか、卒業も難しい、という事態にもなってしまうでしょう。
ですから逆に、今この受験の時点でどうしても生物に興味が持てないから今後の学習が苦痛だ、と思うのであれば、今一度進む学部を再検討した方が良いかもしれません。
では、生物には十分興味はあるし将来そちらの方面に進みたい気持ちもあるけれど、やはり基本的な勉強のしかたがわからない、という人。
そういう人にまずお伝えしたいのは、教科書や図説に書いてある事、ないしはウェブサイトや百科事典等で調べた事をそのまま暗記しようとする必要はない、という事です。
まずは、調べた時にその事象の
『仕組みを理解する』
事だけ考えてみて下さい。
仕組みを理解する、というのは例えば、細胞分裂であれば、その周期自体の呼び方やその周期で行われる作業を言葉や知識として丸暗記するということではなくて、
を考えながら教科書や参考書をじっくり読み進めて行くことです。
そして、はじめのうちは特に、そうやって興味を持って調べて、仕組みを理解した事を自分なりの簡単な図や絵にして、ノートやレポート用紙にメモして行くようにしてみて下さい。
仕組みというものは物事の内容ではなく骨子ですから、はじめにそれを理解することが何よりも大切ですし、紙に書いてまとめてみると不思議とよく整理出来,イメージしやすくなるものです。
文字で書いてあることを自分がわかりやすいように図や絵に書き換えて整理していくのと同時に、他人がその仕組みをどう説明するのか、という事を知るのも、自分が今後よりわかりやすく整理していく際にとても役立ちます。
したがって,インターネットの動画で実験映像を視聴したり、解説授業的なものを板書付きでアップしている人も多く居るのでそれらを観たり、生物関連の番組を観たり、今は無料で活用出来るものがいくらでも手に入りますから、是非それらを利用して立体的に視覚から理解をしていくようにしましょう。
教科書会社各社から図説が出ていますので、視覚で学ぶ一助として必ずそれらも利用しましょう。
理科はどの科目もそうですが,中でも生物が一番視覚で学ぶことが効果的な科目です。
また各図説にも良し悪しがあり、こちらには一行しか載っていないけれどあちらでは一頁割かれている,等の違いもありますので複数持っていると便利だと思います。
仕組みを理解するのには図や絵をノートにメモしていくと良い、とお伝えしましたが、それ以外にも自分なりの用語集を作成するとか、苦手な分野の問題を色々な参考書から一箇所に集めて繰り返し解く、といった作業も効果が期待できます。
したがって、ノートは
という風に分けていくつか作成すると良いでしょう。
こうして作成した生物のノートはやがて既製品の用語集や図説、参考書の代わりに自分専用の貴重な資料となって、大学に行ってからも参照できる宝物になりますから、自分が見直しやすいレイアウトにして余白を多めに残し(追記する事が多々発生するため)、なるべく丁寧な字で作成しておくと良いでしょう
生物は用語集・図説・参考書・問題集と、一度揃えれば受験終了までずっとその一冊を使える他の教科と違い、毎年新たな発見があったり、より進んだ改良された技術が発表されたりするため、頻繁に改訂されていく教科です。
可能なら、最新版が出る度に新しいものに買い替えて行くのがベストなのですが、自分が解りやすいようにラインを引いたり加筆したりしていると、なかなか全てを買い替えてまた一から使い込んで行くのも難しいですよね。
そこで最低限、個々の事象についてのニュースに常にアンテナを張っておき、新聞や雑誌に新しい知識や技術についての情報が掲載されたら、それを自分自身の知識として追加していくようにしましょう。
月刊のサイエンスマガジン『ニュートン』を定期購読するのもお勧めです。
掲載されているのは生物の話題だけではありませんが、他に化学を選択している人も多いでしょうし、理科分野についての様々な知識が深まりますから今後も理系分野で活躍して行くのであれば決して無駄になる事はありません。
最後になりましたが、記述論述対策はどうすればいいか?という点に関しては、事前に基礎となる各分野の知識を、これまでお話ししてきたようなやり方でしっかり身に着け深めておくのはもちろんの事ですが、記述に関しては事象を理解し頭に入れておくだけでは足らず、
『理解し頭に入っている事象から必要な部分だけを引っ張って来て、問いに対して簡潔かつ正確に,制限字数内でその事象を説明する』
という、より高度な作業が必要となって来ますので、この技術を身に着ける為には何より、
『書いて、書いて、書きまくる』
事が一番です。
一定水準の知識と理解がある状態であれば、あとは頭の中にある事を整理して人に伝える、という経験を沢山積めば積むほど、その説明は上手になります。
説明が上手、ということは、記述問題の解答も解りやすく説得力がある、という事になりますから、高得点を取りやすいですよね。
こればかりは数をこなさなくては上達しませんので、入試で記述論述があるとわかっている人は出来るだけ一日一題、テーマを決めて(もしくは参考書から選んで)記述の練習をしておくと良いでしょう。
答えあわせをするときは、解答書を見て確認しますが、解答書をそのまま丸写ししても仕方ありませんので、解答はあくまで参考程度にし、次から自分で同じような書き方が出来るようにまとめ方を参考にするつもりでいると良いでしょう。
ここまで読み進めて頂いて、「やっぱり生物の勉強って面倒臭い!」と思ってしまった方もいらっしゃるでしょう。
そうなのです。
生物には結局、楽で効率の良い覚え方はないのです。
とにかく自分の頭と手を動かして、あれこれ調べたり、図を書いてみたり説明を書いてみたりと、細かい作業を沢山積み重ねて行かなければ大成しない教科なのです。
しかし逆に言えば、物理や化学のように、ある程度の天性の素質も物を言う教科と比べれば、興味を持ち,頭や手を動かしたらそれだけ血肉になり得点に表れるのですから、こんなに単純で『楽』な理系教科はないとも言えるのではないでしょうか。
それに、文中でも言及しましたが、マメでなければ大学に行ってから、ないしはその後生物分野にかかわる仕事に就いてからやっていけないでしょうし、自分でも苦痛になってしまうでしょうから,どうせ生物を選択するのならば、是非マメになってしまいましょう。
生物を選択し、学習し始めた人の殆どが悩む
「生物って一体どうやって勉強すればいいの!?」
という疑問に対して、出来るだけわかりやすく、かつ具体的に例示してみたつもりです。
生物に限らず、学問には楽をして身に着ける方法はありませんが、自分に合ったやり方を工夫して,楽しく身に着ける方法は百人いれば百通りあると言えるでしょう。
結果的には、それが本当の意味で『楽をする』ことになるのだと思います。
一人でも多くの受験生が生物を楽しく勉強し、受験だけでなく将来的にもその知識を活かして活躍して下さるように願っています。