皇室が通うことでも知られている学習院大学は、1847年に設立された公家のための教育機関に起源を発する非常に歴史ある大学です。近年は「GMARCH」の一角、早慶に次ぐ大学の一つとして存在感を放っています。最大の強みともいえる都会に近いながらも落ち着いていて静かなキャンパスは学習や研究、そして息抜きにも最適な環境です。もちろん教育面も特長をもっており、ハイレベルな教授の下で行われる少人数制ゼミ授業では関心ある分野を掘り下げて学ぶことができます。今回はそんな学習院大学について、学習面や生活面を中心に詳しく見ていこうと思います。
学習院大学はその成立の歴史ゆえに多くの皇族が通った大学です。多方面で活躍するOB・OGを輩出している他、最近では高品質な研究でも脚光を浴びています。
学習院大学の起源は1847年に仁孝天皇が京都御所内に設けた公家のための教育機関です。明治時代に東京の神田錦町で官立学校「学習院」として改めて開校したものの、戦前までは宮内庁が管轄する華族のための教育機関であり、それ以外の階層からの入学は限定的でした。1908年に現在キャンパスが置かれている目白に移転し、戦後になると私立学校として新しい経営が始まります。そして1949年、新制大学「学習院大学」となりました。
大学の理念・目的を「精深な学術の理論と応用とを研究教授し、高潔な人格及び確乎とした識見並びに健全で豊かな思想感情を有する、文化の創造発展と人類の福祉に貢献する人材を育成することを目的とする」[i]としており、知識・学術の面では当然ながら人格面でも優れた人材を育成したいという考えが分かります。
研究の最前線で活躍しているハイレベルな教授陣が揃っており、『Nature Index 2018 Japan』[ii]によれば日本の学術機関の中で「高品質な科学論文を最も効率的に発表している」のが学習院大学であるそうです。またこれは企業も含めた日本の全機関の中でも2位にあたります。
そして、この学習院大学は辿ってきた経緯もあり多くの皇族が通ってきた大学です。その他にも多数の著名人の出身校であり、その歴史を感じさせます。元総理大臣で現在は財務大臣などを務める麻生太郎さんなどの政治家や様々な大企業の社長、東大などの他大学で教授を務めるような研究者を輩出してきました。また作家の塩野七生さんやオノ・ヨーコさん(中退)、宮崎駿さん、俳優の角野卓造さんやタレントのクリス松村さん、マラソンの川内優輝さんなどもこの大学で学び各界で活躍しています。
学習院大学は5学部17学科を有する大学で、大学院も含め緑豊かな目白のワンキャンパスで教育・研究が行われています。学生数は10000人ほどと決して少なくはないですが少人数制の授業の多さが特徴であり丁寧な指導を受けることができます。
1949年の学習院大学誕生当初は文政学部(文学科、哲学科、政治学科)と理学部(物理学科、化学科)が置かれていましたが、その後改組が行われ現在は法学部、経済学部、文学部、理学部、国際社会学部が置かれています。法学部には法学科と政治学科が、経済学部には経済学科と経営学科が、文学部には哲学科と史学科、日本語日本文学科、英語英米文化学科、フランス語圏文化学科、ドイツ語圏文化学科、心理学科、教育学科が、理学部には物理学科、化学科、数学科、生命科学科が、国際社会科学部には国際社会科学科が、それぞれ設置されています。
2019年度の入学者数は2119人であり、例年全体で見ると定員よりやや多く入学する傾向にあります。学部・学科の定員の内訳は以下の通りです。
法学部:480人(法学科250人、政治学科230人)
経済学部:500人(経済学科250人、経営学科250人)
文学部:675人(哲学科95人、史学科95人、日本語日本文学科115人、英語英米文化学科115人、ドイツ語圏文化学科50人、フランス語圏文化学科65人、心理学科90人、教育学科50人)※2020年度入試の予定人数です。
理学部:210人(物理学科48人、化学科54人、数学科60人、生命科学科48人)
国際社会科学部:200人
全ての学部が目白キャンパスにあり、目白駅から徒歩30秒ほどの場所にあります。山手線の沿線とは思えないほど静かで落ち着いた環境ながらも、新宿や池袋に近いため通学・遊ぶのにも便利でしょう。学生の街なので近くに専門学校なども多く、美味しいカフェやレストランもあります。キャンパス内は「目白の森」と呼ばれるように豊かな自然が特徴で、春には学内のいたるところにある桜が咲いてとても綺麗だそうです。
ここでは各学部・学科について詳しく見ていきます。
法学部
経済学部
文学部
理学部
国際社会科学部:2016年に設置された新しい学部です。
教育の特徴はレベルの高い教授陣と少人数制のきめ細かい授業です。特に授業は約7割が1クラス40名以下の少人数制をとっており、教授や同級生などの距離感も自然と近くなるでしょう。
資格については、各学部で中学校・高等学校の教員免許を取得することが可能です。また必要な授業を取ることで学芸員の資格も取得できます。他にも教育学科で小学校の教員免許の取得が可能、経済学部で簿記の資格取得に対し教育・経済的支援を行っているなど学部・学科に応じて様々な資格取得への道があります。
名物行事は学園祭の「桜凛祭」です。今年は11月2日~4日に開催され、今回で50回目を迎えます。ミスターコンテストや玉木宏さんや吉沢亮さんなどの俳優の方を招待したトークショー、お笑いライブやプロのアーティストによるライブ、声優イベントが開催される他、たくさんの模擬店が出店されたりサークルなどの有志による企画が行われたりと非常に盛り上がるようです。
ダンスや音楽の発表なども含め参加団体は100を超え、来場者数は約3万人以上にも上ります。毎年恒例で変わった企画には「スマブラ大会」があります。人気ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」を対戦する企画で、学習院大の学生以外も参加できます。決勝大会が桜凛祭で行われ、レベルも高く大画面でとても迫力があるそうです。また近隣の目白地域の飲食店とのコラボレーションも行っており、桜凛祭のスタンプラリーと引き換えにクーポン券をもらうことができます。この機会に学生にも人気のお店に行ってみてはいかがでしょうか。
他に行事としては成蹊大、成城大、武蔵大と対抗で行われる運動競技大会「四大戦」があります。今年で70回を迎える歴史ある大会で、運動部員だけでなくサークルに所属する学生も参加できる競技や教職員による試合も行われます。学習院大学は最も優勝回数が多く、2018年度の第69回大会も優勝を果たしました。
授業は一流教授陣による面白いものが多く、2年次生から少人数によるゼミ形式の授業が行われます。先生から一方的に教わるだけでなく、自主的に調べ考えさせるような内容の授業も多いそうです。以下にいくつかのゼミを紹介していきます。
法学部法学科の「商法演習」はビジネスの世界で重要な会社法について学びます。また政治学科の「ヨーロッパ政治史演習」では現代の世界で大きな問題となっているポピュリズムについて研究します。その他にも『君の名は。』と19世紀絵画に共通する眺望から芸術を理解していく文学部哲学科の「2年次演習B」、ドイツ式の働き方改革が日本で成功しない理由を考えドイツの労働政策から日本へ提言をするドイツ語圏文化学科の「現代地域事情コースゼミナール」、スターバックスのコーヒーが高価なのに売れる理由など身近な題材から企業の経済活動を学ぶ国際社会科学部の「専門演習Ⅱ」など学生の興味を引き出す授業が多く用意されていることが特徴的です。
理学部の研究室にはリニアモーターカーにも用いられる超電導などから物質の性質を解明する物理学科の「町田研究室」、光学顕微鏡を通してナノ粒子の世界を研究する化学科の「齋藤研究室」などがあります。いずれも、1.2年次までの基礎的な学習を通じて興味を持ったゼミや研究室で専門的な研究を行うことが可能です。
この章では入学試験について簡単に記していきます。法学部や国際社会学部などを中心に難易度は高く十分な対策が必要でしょう。学部・学科によって入試種別や受験科目は異なるので注意してください。
入試種別には一般入試、指定校推薦入試、公募制推薦入試、その海外帰国入試や社会人入試などもあります。対応している学部・学科は以下の通りです。また、一般入試にはコア試験とプラス試験の2種類があります。プラス試験はほぼ全学部・学科で行われますが、文学部は心理学科と教育学科のみでの募集になります。
表2 各学部・学科の入試種別
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明示の上で許可)
一般入試については、コア試験・プラス試験ともに2月上旬に行われ、各学部それぞれの試験の日程は異なります。学部によって異なりますが英語など3科目の受験が必要です。またプラス試験の募集人数はコア試験と比べかなり少なくなっており、倍率もほとんどの学科で高くなる傾向にあります。
推薦入試は調査書や志望理由書などの書類審査と面接、小論文や筆記により選考されます。出願期間は11月の上旬です。また法学部政治学科の自己推薦特別入試は一定の英語力が求められ、英文読解による小論文と面接を受けることが必要です。AO入試についても書類審査と筆記試験、口頭試問が選考基準になります。
近年、「GMARCH」とも呼ばれるように私大では早慶に次ぐ難関大の一つと見なされています。学部ごとに見てみると法学部や国際社会学部の偏差値が高くなっています。特に近年国際系の学部が人気ということもあり、新設の国際社会学部はこれからも人気が高くなっていくかもしれません。
入学金が前学部共通で20万円、在籍料が6万円かかります。授業料は学部によって異なり、法学部と経済学部は68万6千円、文学部は77万円、理学部は108万4千円、国際社会科学部は90万5千円必要です。その他に研究実験費(文学部と理学部の一部学科で3万円もしくは8万円)、施設設備費(27万円~33万円)、父母会費などがかかり初年度納入費は120万円~170万円ほどです。詳しい内訳は以下の通りです。
表1 各学部・学科の学費について
(髙橋作成、転載は名前・記事名を明示の上で許可)
奨学金は、受験生向けの入学前予約型給付奨学金と在学生向けの奨学金があります。受験生向けの奨学金は「目白の杜奨学金」と「学習院桜友会ふるさと給付奨学金」です。
また在学生向けのものは大学独自の奨学金が給付型のものと貸与型のものがあり、他に日本学生支援機構や民間奨学財団、地方公共団体等の奨学金もあります。大学独自の奨学金の一部を以下に記します。
【入学前申請】
【入学後申請】
大学が指定している学生マンションと学生会館があります。
マンションは中板橋(グラディード中板橋)と氷川台(ヴィンテージ氷川台)に、学生会館は千川(キャンパステラス千川)にありいずれも大学まで徒歩と電車を合わせて10~20分で着くアクセスの良さが魅力の一つです。
学生会館は2019年新築で家具や家電、食事も付いています。学生しかいないため近所とのトラブルの心配もなく、同じ学部の学生と仲良くなれます。またオートロックなどセキュリティの面も充実しており安心して生活することができます。
学習院大学の特徴の一つに高い就職率があります。2018年度の就職内定率は98.7%です。大学のHPにもキャリア支援に力を入れているという旨が述べられており、就職率の高さにつながっているのでしょう。また、大学のHPの「キャリア・就職」のページが非常に充実していることも目につきました。このことから情報公開に力を入れており、キャリア支援に自信を持っていることが分かります。
全体的な傾向としては金融業、運輸・通信業、サービス業に従事する卒業生が多くなっています。学部ごとの特徴を見ていくと、法学部では他学部に比べ東京23区などの公務員の割合が高く、経済学部は大手銀行などの金融業に就く割合が高くなっています。文学部からはサービス業など多種にわたる業種に進んでいますが、教育学科などを中心に教員となる卒業生が多くなっています。理学部は運輸・通信業と製造業に進む割合が非常に高く、また進学する学生も多くなっています。2018年度は他大も含めた大学院への進学率が35%でした。
学習院大学大学院は法学研究科、政治学研究科、経済学研究科、経営学研究科、人文科学研究科、自然科学研究科、その他専門職大学院として法務研究科(法科大学院)の7つの研究科から為っています。それぞれ博士課程・後期課程を有しており、学生数は合計で500人弱です。人文科学研究科、自然科学研究科は以下の専攻から構成されます。
都会にありながらも自然豊かな環境で、落ち着いた雰囲気、そして伝統が感じられる品の良さが特徴です。新宿や池袋に非常に近いながらも広く静かなキャンパスは他の大学にはない強みと言えます。(キャンパス内に馬術部が飼育している馬もいます!)学生も落ち着いた印象の人が多いようです。大学の規模はそこまで大きくないものの部活動やサークルの数は多い(珍しいサークルも多いようです)ので学生生活も十分に楽しむことができるでしょう。
1年生の内は学科によっても異なりますが法学部などは大人数での授業が多いので、友人は語学のクラスかサークルや部活などで作ることが多いようです。施設も図書館やパソコン室など充実しています。全体の図書館のほかに法学部・経済学部生のための図書センター、理学部図書館もあり、専門的な研究に必要な資料集めや勉強にも利用できます。
学習院大学はスポーツ推薦で学生を入学させてはいないため運動部は強豪というわけではありませんが、活動する環境は整っているようです。東京都一部リーグに所属しているサッカー部をはじめ、関東二部リーグに所属するアメリカンフットボール部、マラソンの川内優輝選手を輩出した陸上競技部などが好成績を目指して日々練習に励んでいます。
メリットは充実した教育と就職率の高さにあるでしょう。教育に関しては3.5でも述べた通り少人数の授業によりきめ細かい教育がレベルの高い教授陣から受けられます。内容が難しい授業もありますが、意欲さえあれば興味のある分野の深い教養を得られるでしょう。マスコミ・広告セミナーや業界研究セミナー、社会現象を学ぶ講座など100以上の就職サポートのプログラムが開催されている中で、就職率が高くなっている最大の要因は「面接対策セミナー」です。これは多くのOB・OGが協力して面接の基本や面接に対する心構えを伝える行事で、これも含めた就職プログラムに500人近いOB・OGが協力しています。
参考
[i] 学習院大学HP 「理念・目的」(10/2閲覧)
[ii]Nature 「Nature Japan/プレスリリース/日本の科学が衰退し続ける中、小規模な大学や研究機関が輝きを放つ」 (10/2閲覧)
[x] 学習院大学文学部日本語日本文学科HP 「構成・指導・カリキュラム」
(以上10/3閲覧)
[xi] 学習院大学文学部英語英米文化学科HP 「英語英米文化学科について」
[xii] 学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科HP 「学科紹介」
[xiii] 学習院大学文学部フランス語圏文化学科HP 「学科紹介」
(以上10/4閲覧)
[xvi] 学習院大学理学部HP 「学科・専攻紹介 数学科・数学専攻」
[xvii] 学習院大学理学部HP 「学科・専攻紹介 物理学科・物理学専攻」
[xviii] 学習院大学理学部HP 「学科・専攻紹介 化学科・化学専攻」
[xix] 学習院大学理学部HP 「学科・専攻紹介 生命科学科・生命科学専攻」
(以上10/6閲覧)