不飽和度の観点から見る「構造決定」

化学

 不飽和度という言葉を聞いたことがあるだろうか。ある程度、有機化学の暗記や考え方が身についてきた高校生であれば、より実践的な問題に手を付けたいと思い始める時期かもしれない。しかしやってみるとわかるのが、なかなか知識だけでは問題は解けないということだ。そこで実際に大学受験で扱う構造決定の問題を解く際に必要となってくるのがこの不飽和度の考え方なのである。不飽和度とは、飽和型の炭化水素に比べてどれだけ水素原子が不足しているか、すなわち分子内に不飽和結合や環構造がどのくらい存在しているのかを知る指標になるものである。参考程度に教科書に載っていてもなかなかこの考え方が大々的に取り上げられないことに驚きはあるのだが、つまりは不飽和度を求めることによって構造の候補が一気にしぼりやすくなるという事が言えるのである。それではまず、不飽和度の求め方から説明していこう。

不飽和度の求め方

まずは不飽和度の求め方そのものについて説明する(具体的な使い方は後述する)。この求め方自体は大変シンプルなので覚えておこう。以下に手順を示す。

  • 1. 分子式を求める
  • 2.
    • (a)分子式が炭素と水素、または炭素と水素と酸素のみからなる場合 (C、H または C、H、O のみ)
      • (不飽和度)=(Cの数×2+2- Hの数)÷2
      • C の数×2+2とは、 ”飽和型炭化水素における水素の数”であるという事から覚えられるだろう。
    • (b)分子式内に窒素が含まれる場合
      • (不飽和度)=(Cの数×2+2+ Nの数-Hの数)÷2
      • (a) との違いは、”飽和型炭化水素の数”に窒素の数を足すという点だけである。

これで、不飽和度の求め方は終わりとなる。入試で扱われる構造決定においては C、H、O、N について知っておけば十分だろう。では、具体例を見てみよう。

  • 1. C2H4O2
    • (不飽和度)={6(飽和型炭化水素における水素の数)-4(H の数)}÷2=1
  • 2. C2H5NO2
    • (不飽和度)={6(飽和型炭化水素における水素の数)+1(窒素の数)-5(H の数)}÷2=1

不飽和度の表す意味

上で求めた不飽和度をどのように使えばよいのか説明する。前述したように、不飽和度とは飽和型炭化水素 と比べたときの水素の欠損量を表すものである。分子式からわかるように、二重結合か環構造を持つときに飽 和型炭化水素と比べて水素の数は減少する。まとめると、

不飽和度が1→分子内に二重結合×1 or 環構造×1

不飽和度が2→分子内に二重結合×2 or 環構造×2 or 二重結合×1、環構造×1 or 三重結合×1

というように、部分的な構造の候補が瞬時にわかってしまうのだ。

練習問題

問、化合物Aの構造式を求めよ

化合物Aは分子式 C9H6O2で表される芳香族化合物である。また、Aの水溶液に炭酸ナトリウムを通じると気体が発生した。Aのベンゼン環に直接結合している水素のうちひとつを塩素原子に置き換えると、2種類の構造異性体が存在した。

解答解説

まずは不飽和度を求めよう。分子式がわかっているので不飽和度は、7とわかる。

また、Aは芳香族化合物であるからベンゼン環を持つ。ベンゼン環の不飽和度は

1(環構造×1)+3(二重結合×3)=4

なので、残り7-4=3の不飽和度について考えよう。

Aの水溶液に炭酸ナトリウムを加えると気体が発生したことから、Aはカルボン酸であることがわかる。カルボン酸には、C = O二重結合が1つ含まれるので、残りの不飽和度は2である。

この時点で、以下の構造が含まれることが決定している。

次に残りの構造について考えていく。炭素9個のうち、すでに7個は決まっており、不飽和度は残り2であることから、残りの構造は炭素2つで不飽和度2を満たす、すなわち炭素の3重結合以外ありえない。塩素置換により2種類の構造異性体が存在することから、2つの置換基はパラ位であることがわかる。よって、化合 物Aの構造は以下のようになる。

まとめ

今回扱った練習問題は比較的シンプルなものであり、本当の入試問題であればもっと文章量も多く、それに 伴って整理しなければならない情報量も増える。今回解説した不飽和度の考え方はどんな構造決定の問題に対しても役に立つ考え方なので、問題を見たらまずは不飽和度を求めようという思考に至るように訓練してもらいたい。不飽和度が求まれば、あとは絞られた候補の中から条件に合う構造を創るパズルのようなものであ る。もちろんその条件を読み取るためには盤石な有機化学の知識も必要なので、パズルと暗記の両方をバランスよく鍛えることを行ってもらいたい。

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